子供がスポーツをしているなら…親が知っておきたい健康リスク

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 コロナ感染拡大を受けて、小中高校、大学で部活やクラブ活動が中止されているところもあるが、それとは別に、子供がスポーツをしている場合、特に女子では、親が知っておきたい健康管理上の問題点がある。日本スポーツ協会認定スポーツドクターで、愛知県豊橋市の「マミーローズクリニック」で思春期・スポーツ外来を担当する宮本由記医師(産婦人科医)に話を聞いた。

 思春期の女子アスリートの健康管理上の問題点は、「女性アスリートの三主徴」と呼ばれている。具体的には、「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」だ。

 利用可能エネルギー不足とは、運動によるエネルギー消費量に対して、食事などによるエネルギー摂取量が低いこと。これが続くと体重・体脂肪が減少し、生理が3カ月以上止まる無月経や骨粗しょう症のリスクが高くなる。無月経は女性ホルモンの分泌量を低下させ、骨粗しょう症を一層起こしやすくする。

「骨粗しょう症は疲労骨折に関連しており、三主徴のうち1つ該当すれば2・4~4・9倍、全部なら6・8倍疲労骨折を起こしやすくなるとの報告もあります」

■一般的な部活動でも油断禁物

 女子アスリートの無月経は珍しいことではなく、国立スポーツ科学センターが実施した国内トップレベルの女性アスリート683人対象のアンケート調査では、無月経を含む月経周期異常のある人は約4割を占めた。

「女性アスリートの三主徴は、トップアスリートに限りません。一般的な部活動であっても、また弱小チームでも、さらには運動量がさほど多くなくても、三主徴が起こる可能性があります」

 どれくらいのエネルギーを食事で摂取すればいいのか? それは、競技種目や体格、活動強度、トレーニング内容や熟練度などによってエネルギー消費量が大きく異なるので、計算式はあるものの、一概に示すのは難しい。

 ひとつの目安として、厚労省が出している「エネルギーの食事摂取基準」がある。

 2020年版では、活発な運動習慣を持っている場合、たとえば女子10~11歳では2350キロカロリー(1日=以下同)、12~14歳で2700キロカロリー、15~17歳で2550キロカロリー。

「そもそも摂取エネルギーが足りているのか? 足りていないところで運動をすると、無月経や骨粗しょう症のほか、体の成長に支障が出てきます。『成長曲線』を描いてみて、身長、体重が右肩上がりの曲線のカーブに沿っていない、体重が低下している、あるいは横ばいになっているようなら、食事の摂取エネルギーが足りているか、疑ってみるといい」

 成長曲線とは身長と体重で描く曲線で、子供の体の成長の様子が分かる。

 自動で成長曲線が記録されるアプリもあるので、利用するといい。

「食事の摂取エネルギーが少ない場合、基本の1日3食に加えて、補食でつなぐ。小中高によって持ち込みに制限があると思いますが、おにぎりを食べる、おにぎりの具材を肉などタンパク質にする、牛乳やチーズなどのカルシウムを取るなど、可能な範囲で工夫を」

 成長期の栄養不足は、将来に影響を及ぼす。骨量は20歳前後でピークを迎え、それからは増えず、閉経以降、急激に減少する。骨が育つ時期に骨が十分に育っていないと、ピーク時の数値が普通より低くなり、早い段階で大腿骨骨折など骨粗しょう症による弊害が出てくる恐れがある。

 前出の通り、無月経は骨をもろくする。

「3カ月以上月経がない、15歳になっても初潮が来ていないという場合は、ぜひ婦人科で相談してください」

「体重が軽い方がいい」と本人が思い込み、不調があっても黙っているケースもある。過剰にならないように、親が注意深く見守ることが必要だ。

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