男性不妊症のすべて

男性不妊症の疑いがある場合は何科を受診すればいいのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 みなさんは風邪をひいたら近所の内科クリニックを受診するのではないでしょうか。それでは、男性不妊症を疑った場合に精子の状態を診てもらうには何科を受診すればいいと思いますか?

 おそらく近所の内科では「専門外です」と言われてしまうでしょう。奥様がすでに不妊検査で婦人科に受診していたら、そこで精液検査は行ってくれるかもしれません。しかし、何も分からない場合はインターネットで検索する人が多いと思います。

 ただ、どこのクリニックや病院が男性不妊症を専門にしているかは分かりません。そこで、男性不妊症に関する疾患を扱っている医療機関を検索するおすすめの方法をお教えします。それは、「一般社団法人日本生殖医学会」のホームページをチェックすることです。

 トップページの右下あたりに、「男性不妊症診療アンケート回答施設一覧」というバナーがあるので、そこをクリニックします。移動したページでは、泌尿器科領域の会員に対して男性不妊症に関する診療内容についてアンケート調査を行なっており、その一覧がPDFで掲載されています(2019年9月28日掲載・更新)。

 内容を見ると、男性不妊症に関する手術、勃起障害・射精障害の治療、精子凍結を行っているかどうか、その有無が一覧で記載されています。ここに掲載されているクリニックや病院に問い合わせをするのがおすすめの方法です。

 筆者が勤務している東邦大学医療センター大森病院も男性不妊症の診療を専門で行っています。東邦大学医療センター大森病院は、東京都大田区にあり、羽田空港から車や電車で30分以内のエリアに位置しています。品川駅も近いので、全国から空と陸のアクセスに優れた大学病院と言えます。「リプロダクションセンター」という男性および女性の不妊症を同時に診察する部門が備わっていることを特徴としています。泌尿器科のリプロダクションセンターは完全予約制で、男性不妊症の診察をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせをお待ちしています。

 ところで、なぜ東邦大学が生殖医学に造詣が深いのか、ご存じでしょうか? 歴史を紐解くと、昭和34年に東大助教授より東邦大学産婦人科に赴任された林基之教授が精力的に研究活動を進め、世界と肩を並べる不妊症に関する知見を見出していきました。林教授はヒトの体外受精の研究もされており、後述する英国のエドワーズ博士とも争っていました。しかし、倫理的な観点から体外受精卵のヒトへの移植は消極的でした。

 1978年、エドワーズ博士は世界で初めての体外受精ベビーであるルイーズ・ブラウンを誕生させ、2010年にノーベル医学生理学賞を受賞されました。ご記憶にある方もおられると思います。残念ながら林教授は、ルイーズ誕生を見ることなく1977年に亡くなられました。もしも林教授がご存命だったら……と思わずにはいられません。

 ルイーズ誕生後、日本でも体外受精の臨床応用の気運が高まり、1983年に東北大学でわが国初の体外受精による出生児第1号の誕生を発表しました。

 これからも、東邦大学は不妊治療および研究を精力的に行なっていきます。

小林秀行

小林秀行

1975年、東京都生まれ。2000年東邦大学医学部を卒業。卒後研修終了後に東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座免疫学分野に進学。医学博士を取得。ペンシルバニア大学獣医学部にてリサーチアソシエイト。その後、東邦大学医学部泌尿器科学講座に復帰。2014年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は男性不妊症。noteにてブログ「Blue-男性不妊症について」を配信中。

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