新型コロナ禍で何が起きているのか

寿命が延び、出生数減少で日本は深刻な人口動態へ

(C)Ca-ssis/iStock

 死者数が前年を下回ることはそれほど珍しいことではない。1990年以降何度かあった。しかしコロナ禍にも関わらず死者が減ったのは、まったく想定外だったと言っていい。もちろん死者が少なかったのはいいことだし、それ自体が問題というわけでない。だがそれによって、おそらく平均寿命がさらに伸びたはずである。毎年7月に入ると、前年の平均寿命が発表されるので、どれだけ伸びたか注目したい。

 ちなみに米国ではコロナによって平均寿命が1歳分短くなったという。 もうひとつ、出生数が驚くほど下がった。昨年の出生数は87万2683件で、1899年に統計をとり始めて以来最少となった。19年と比べても2万5917人減(マイナス2.9%)である。その結果、日本の総人口は1年間で51万人以上も減少した。栃木県宇都宮市がそっくり消滅したのと同じ人数だ。

 つまりコロナ禍の最中、平均寿命がさらに伸び、子供がいっそう減り、総人口も減り、高齢化が一段と進んだのだ。しかもこの間に、多くの現役世代が収入減や失業を経験した。日本全体の経済は悪化したまま、回復の兆しがなかなか見えてこない。

2 / 4 ページ

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事