■インシデントとアクシデント
まず、患者さんに対して事前に担当医が手術で起こりうる合併症についてしっかり説明していたかどうかという点です。予定手術をする前には必ず「インフォームドコンセント」を行います。治療の詳しい内容、期待される結果や予後、起こる可能性がある合併症やリスクなどについて医師が適切な説明を行い、患者さんに納得してもらったうえで手術を実施するのです。
たとえば、輸血は使わずに心臓手術を行う予定だった場合、そう患者さんに伝えてあったとしても、実際の手術では患者さんの状態が出血しやすかったために予想よりも出血量が多く、一度閉じたところを再び開胸して止血を行い、その際に輸血を使うケースがあります。こうした考えられる事態について、事前に「そうした可能性もあります」と患者さんに話してあるかどうか。そうであれば、何かトラブルが起こったとき、それは医療事故ではなく起こりうる合併症だと第三者も判断できます。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」