新型コロナ 重症化を防ぐ最新知識

イスラエルで再拡大の兆し 考えたい炎症性食品回避の食生活

やっと日本でもワクチン接種が進んできたが…(大学での集団接種の様子)/
やっと日本でもワクチン接種が進んできたが…(大学での集団接種の様子)/(C)共同通信社

 新型コロナウイルス感染症は新たなステージに入ったようだ。東京五輪に向け、日本が欧米から一足遅れで積極接種を始めるなか、ワクチン先進国であるイスラエルや英国では新たな感染拡大が起きている。

 従来株よりも感染力が2倍強いとされるデルタ株が急拡大しているからだ。

 世界に先駆けてファイザー社製ワクチンを900万人の国民のうち550万人に接種させ、感染症を制圧したかにみえたイスラエルは新規感染者が1日50人以下から100人を超えるレベルまでに増加。公共交通機関などでマスク着用の義務化が再開した。

 英国では1日の新規感染者数が1月の6万人から4月下旬には2000人前後まで減少。ところが、5月後半から再拡大が始まり、6月17日には2月22日以来の1万人台を突破した。

 日本は欧米に比べ検査態勢が不十分で、実態はよく分からない。しかし、デルタ株が増えているのは間違いない。7月中に感染者の過半数がデルタ株に置き換わるのでは、との予測もあり感染者増は避けられない状況だ。

 従来のマスクやワクチンに依存した対策だけでは、デルタ株感染を十分予防できない可能性が高い。だからこそ考えたいのは、感染しても死者や重症者を極力出さないこと。新型コロナに感染しても、多くは無症状か軽症であることを思えば、感染回避はもちろん、重症化しないために個人がいまできることも考えるべきではないか。

 食事を見直すことはそのひとつかもしれない。

 欧米では近年、炎症性食品が注目されている。加工肉や加糖飲料など体内炎症を促進する傾向の高い食品を避けることが心臓病や脳卒中のリスクを低下させるのではないか、というのだ。

 実際、心臓病や脳卒中に関わっているインターロイキンやケモカインなどの炎症物質はアテローム性動脈硬化症の初期と後期に関連しているという。

 すでにさまざまな研究により食事が体内炎症に影響を及ぼすことが示唆されている。例えば長寿食とされる地中海式食生活は、インターロイキンなど複数の炎症性バイオマーカーのレベルが低い。

 2020年11月の米国心臓病学会誌に米国ハーバード大学の研究チームによる「米国の男女における食事の炎症の可能性と心血管疾患リスク」が報告されている。

 それによると、米国の大規模疫学調査から21万人のデータを解析したところ、加工肉や精製穀物、加糖飲料などの炎症性食品を多く取った人は緑黄色野菜やお茶といった抗炎症性食品を多く取った人に比べて、心臓病リスクが46%、脳卒中リスクが28%高かったという。

 欧米では食事が炎症反応に及ぼす影響を評価する指標として「DII(食事性炎症基準)」が開発され、病気との関連の研究が進んでいる。

 地中海食と並び長寿食といわれる和食を常とする日本人はどうか。国立がん研究センターの予防研究センターが2020年1月に公表した「食事調査票から得られた食事由来の炎症修飾能の正確さについて」によると、DIIスコアと炎症マーカーとの関連は日本人男性には見られたものの、女性では見られなかった。

 新型コロナ感染症の本体は血管病であり、重症化は炎症性物質(サイトカインなど)が過剰に分泌されるサイトカインストームが引き金だ。つい先日、米国FDAは新型コロナ治療に、炎症性物質インターロイキン6拮抗薬のアクテムラ(日本製)を承認した。薬は最終手段として、普段から炎症性物質を出さない体にすることが新型コロナ感染症の重症化から逃れる術のひとつになるのではないか。

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