身近な病気の正しいクスリの使い方

薬を正しく使うには「正しい情報」の見極めが欠かせない

写真はイメージ
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 技術の発展によって社会が著しく変わっていく中で、医療においても薬においても大切なのは「情報」だと感じています。

 たとえば、ある薬が完成して一般でも使えるようになったとします。薬のクオリティーをそれ以上に上げることは、開発に携わる研究者や製造者でないとできません。しかし、「正しく使うこと」で、その効果を上げる、または、より効果的な使用方法を見つけることは患者自身や薬を使う医療者の努力によって可能だといえます。

 薬を正しく使う=使用を最適化するために必要なのが「情報」です。情報の伝わる速度はインターネットの普及によって急激に向上し、同時に情報量も増えています。良い情報だけでなく、悪い情報も伝わりやすくなっていて、玉石混交になっています。ですから、情報に振り回されず、正しい情報を見極め、理解し、判断するということが重要です。

 これは、薬を使う医療者にとっては当然のことですが、患者さんも、あふれている膨大な情報の中から、自身または家族にとっての、薬に関する正しい情報を見極める力が必要です。自身の健康は他人任せではなく、自ら守るというセルフメディケーションの意識も大切ではないでしょうか。

 近年、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンやアルツハイマー型認知症に対する抗体製剤など、新しい薬が次々に開発されています。同時に既存薬の情報も使い方に関する知見が蓄積され、新しく更新されています。情報に振り回されず、正しく収集し、理解し、判断することが適正な薬の使用につながります。情報を見極める力を培って、自分自身の健康維持につなげていきましょう。

 これまで紹介してきた薬と健康に関する情報が皆さまの健康維持の一助になれば幸いです。(おわり)

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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