医者も知らない医学の新常識

高血圧の薬で認知症を予防できるのか 専門誌でデータ発表

写真はイメージ
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 高血圧も認知症も高齢者に多い病気です。この2つの間には、どのような関係があるのでしょうか? 高血圧の状態が長く続くと、動脈硬化が進み、その血管へのダメージは認知症の原因となります。一方で高血圧の治療により血圧が下がり過ぎると、脳の血流が低下して認知症の症状がむしろ進行する可能性もあります。高血圧と認知症との関係は、そう簡単ではないのです。

 いま広く使用されている降圧剤に「ACE阻害剤」や「ARB」(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)と呼ばれるタイプの薬があります。これは塩分や水分を維持するための仕組みであるレニン・アンジオテンシン系という体の仕組みを抑える、という作用の薬です。

 最近、このタイプの血圧の薬が認知症の予防につながるのでは、という研究結果が報告されて注目されています。こうした薬には血圧を下げるだけでなく、血管の炎症を抑えるような働きがあるので、血管の老化を防ぎ、それが認知症予防につながる可能性があるのです。

 特に注目されているのは、脳の血管に直接作用する可能性がある薬です。今年の高血圧の専門誌に発表された論文に、「脳に薬が移行するようなタイプのACE阻害剤やARBを使用することで、脳に移行しない薬と比べ物忘れを予防するような効果があった」というデータが発表されています。高血圧の薬は認知症予防に有効な可能性がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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