まず、若手医師に手術を任せる前の段階で、初歩的な手技がどの程度のレベルで習得できているのかを把握しておく必要があります。電気メスをしっかり扱えるのか、糸を迅速かつ正確に結べるのか、ハサミ、鉗子、ピンセットなどの手術道具をスムーズに使えるか……そうした基本的な手技をすべてチェックするのです。さらに最も大切なことは手術における局所解剖について少なくとも表裏から認識しているかどうかの知識を点検しておかなければなりません。模型やVRなどの手技練習用シミュレーターでの確認はもちろん、実際の手術の中でもしっかりチェックします。私が執刀する手術にスタッフとして参加させ、心臓手術で必要になる手技をシチュエーションごとに実践させるのです。たとえば、心臓手術では血管縫合が欠かせませんが、まずは皮膚の縫合をやってもらいます。その際、血管縫合で使うような小さな針と細い糸で縫合させ、問題なくできていれば血管でもいけるだろうと判断できます。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」