時間栄養学と旬の食材

ハモは日本人が不足している不飽和脂肪酸が豊富で朝食向き

皮ごと食べるのがオススメ
皮ごと食べるのがオススメ

 ウナギの仲間であるハモの旬は6~8月。広島では「ハム」、九州地方では「ウミウナギ」と呼ばれ、夏を代表する食べ物です。

 硬くて長い小骨がびっしり通っているため、1寸(約3センチ)の間に包丁で25回、背皮まで到達しないで切れ目を入れていく技術が江戸中期に、京都の職人によって開発されました。今は骨切り専用の機械を導入しているところが多いですが、骨切りまで施す作業も職人の腕の見せどころ。店で食べる高級なハモ料理の大半は、この技術料とも言えるでしょう。

 そんなハモのエネルギーは100グラム当たり144キロカロリーで、アナゴ(同161キロカロリー)やウナギ(同255キロカロリー)より低いことがわかっています。ハモにはウナギ同様、ビタミンA(レチノール)が600マイクログラム含まれると報告されていた時期もありましたが、現在ではレチノール量は50マイクログラムと報告されています。

 とはいえ、ハモには良質なタンパク質が多く含まれていますし、日本人の食事摂取基準でも取ってほしいとされているDHAやEPAなどのn―3系不飽和脂肪酸が多く含まれ、血中の悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減らす働きがあります。タンパク質とn―3系脂肪酸……まさに朝食向きの食材です。

 韓国産と徳島産のハモを比較した実験があります。体重0.3~0.8キロの雌で比較したところ、韓国産は低水温域に生息し、成熟開始年齢が高く、脂質を多く蓄えるため肥満度や肝重量が高く、脂質の量が多いこともわかっています。

 また、ミネラルでは塩分を体外に排泄(はいせつ)して高血圧の予防に働くカリウム、骨ごと食べることになるのでカルシウムが豊富に取れます。

 さらに、ハモの皮は魚類の中でも特に脂質が少なく、純度の高いコラーゲンが抽出できます。市販の化粧品などにも使用されるほど良質なコラーゲンが多く含まれているのです。また、近年注目されているコンドロイチン硫酸。骨粗しょう症予防、高血圧や動脈硬化予防などにも期待できるので、健康のためには、ぜひ皮ごと食べるのがよいでしょう。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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