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化膿性汗腺炎 繰り返すおできの原因は毛穴の詰まりによる炎症

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 皮膚の病気は多岐にわたっており、私が勤務する日本大学医学部付属板橋病院には、日々、実にさまざまな患者さんが訪れます。そんな中から、病気の認知度は低いものの、患者さんの数が相当いると予想される「化膿性汗腺炎」についてお話ししましょう。

 この病気は一言でいうと、“繰り返すおでき”です。日本では男性、特に20~40代の比較的若い世代に多く、わきの下やお尻、脚の付け根といった汗をかきやすい場所にできます。

 最初はポツポツとしたおできで、見た目はニキビにも似ているため、「大したことないだろう」と放っておきがち。しばらくすると確かに治るのですが、また現れたりします。

 それを繰り返しているうちにどんどん悪化し、皮膚に穴が開いたようになり、ひどい場合は膿が出ることもあります。ここまでくると痛みも相当増していて、歩いたり、座ったりするのが苦痛、腕が上がらないなど、運動機能に支障が生じるようになります。

 汗の出やすい部分に症状が現れることから「汗腺炎」とも呼ばれるのですが、実はこの病気は汗とは関係なく、毛穴が詰まって炎症を起こす「毛穴の病気」です。

 毛穴にアカのようなものが詰まり、毛穴の袋が膨れて破れると膿が出るようになり、どんどん患部が広がっていくのです。

 しかし病名のためか、「不潔だからなった」と勘違いされる患者さんがとても多く、汗をかきやすい部位で発生することからか、自分が不潔なのではないかと、中には一日に何度もお風呂に入り、それでも治らないといって悩む人もいます。中には、あまりに思いつめて引きこもりになる人もいます。

 繰り返しになりますが、この病気はあくまでも毛穴の炎症によるもので、不潔だからなるのではありません。

 では、なぜ毛穴の炎症が起きるかというと、明確な原因は不明ですが、「自己炎症」という点はわかっています。

 私たちの体の中には、炎症が起きたときに炎症の原因をオフにする“スイッチ”があります。健康な状態だと炎症が起きるとスイッチをオフにできるのですが、自己炎症を起こす人はなぜかこのスイッチが機能しなくなり、“スイッチオン”状態が続き、症状が悪化していくのです。

 治療法には外科的治療、内科的治療があります。炎症が悪化して座るのもつらいとか衣服が肌に触れるだけでも痛いという場合は、手術でひどくなった部分を取り除きます。内科的治療だと抗菌薬や注射、服用薬、塗り薬といった治療法があります。どれも保険適用でできる治療法です。

 薬を使うことで、確実に改善される患者さんが多いのですが、疾患の部位を人前で見せたくないことや、疾患名を知らないため、人知れず悩んでいる人もいると思います。汗をかきやすいところになかなか治らないおできがある人は、皮膚科の先生に相談してみてください。

▽日本大学医学部付属板橋病院皮膚科病棟医長・葉山惟大医師(皮膚科専門医)

葉山惟大

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