コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

医療でのVR活用<上>目の前に患部周辺の3次元CGが浮かぶ

「HoloeyesXR」/
「HoloeyesXR」/(提供写真)

 実際には存在しない物や空間が、あたかも目の前にあるかのように再現される「VR(バーチャルリアリティー=仮想現実)」。ゲームなどエンターテインメント分野で普及している技術だが、医療分野での活用が進められている。

 医療系ベンチャー「Holoeyes(ホロアイズ)」(東京都港区)が開発した「HoloeyesXR」は、患者のCTやMRIから生成された3次元データをVRで見られるように変換するサービスだ。依頼した医療機関は変換されたVR閲覧用データをクラウドからダウンロードし、アクセスキーを入力。市販のVRゴーグルなどのヘッドセットを装着すると、目の前に患部周辺のCGが浮かぶように現れる。

 どのように医療に活用されているのか。外科医の杉本真樹COOとともに、2016年に同社を設立したプログラマーの谷口直嗣CEOが言う。

「これまで医師は、患者の体と向き合う際にレントゲンやCTなどの2次元画像を見ながら、頭の中で3次元の体の中をイメージしていました。しかし、専門家といえども決して理解しやすいとは言えません。それをVRによって3次元で再現することで、まるで自分が患者の体の中に入り込んだ感覚で、臓器や血管、神経などの位置関係を高い解像度で認識できるので、さまざまな治療のシミュレーションが綿密にできるのです」

 VRで再現された患部周辺の3次元モデルは、「拡大」「縮小」「回転」「移動」ができる。そのVR空間上には、線や文字などを自由に描画することも可能。手術の計画を立てる場合、どのようにアプローチするかなどの情報を担当する複数の医師がVRで共有できるわけだ。

 このような機能があることから、患者への病状や手術の説明に使うこともテスト的に行われているという。

「医療技術は暗黙知といわれ、その技術は職人技的で継承が難しいとされています。しかし、『HoloeyesXR』を利用すれば、熟練医師の手技や独自の術式をVR空間内で追体験することが可能。若手医師の術式トレーニングや技術の向上にも大いに役立ちます」

 現在、HoloeyesXRを導入している医療機関は全国80施設以上になるという。2020年にはクラス2の医療機器ソフトウエアとしての認証を取得している。VRを活用した医療技術の向上は、患者にとって大きなメリットになるはずだ。

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