女性の不妊治療で何が行われているのか

不妊治療の大きな障壁 卵子の老化は止められない

半数は原因不明(写真はイメージ)/
半数は原因不明(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

「毎月タイミング合わせているけれど、なかなか子供に恵まれません」

 結婚して1年、2年と過ぎ、こう思って不妊治療の病院を訪れる患者さんは少なくありません。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、日本で不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は全体で18.5%、これは夫婦全体の5.5組に1組にものぼります。避妊をせずに1年間夫婦生活を営んだにもかかわらず、妊娠できない場合を「不妊症」と呼びます。

 病院を訪れる患者さんはみな「子供ができない原因を知りたい」と言われます。しかし、実際に一般的な不妊症の検査を行って原因が明らかとなる患者さんは全体の約半数程度に過ぎません。主な原因としては、毎月しっかりと排卵が起きない排卵障害や、受精卵の通り道である卵管が閉塞している、精子が少ないあるいは運動率が低いなどの男性因子が挙げられます。ただ、残りの半数は原因が分からない、いわゆる「原因不明不妊」です。

■原因不明不妊で最も問題なのが「卵子の老化」

 原因不明とされる不妊患者さんの多くが抱えている問題、それが「卵子の老化」です。日本産科婦人科学会の統計によると、女性の年齢が35歳を過ぎると妊娠率や出産できる割合は明らかに低下し、逆に妊娠されても流産となる割合が増加します。特に40歳を過ぎるとこの傾向はより顕著に表れます。これは「卵子の老化」が原因と考えられています。

 欧米ではすでに体外受精により得られた胚(受精卵)の染色体検査を調べる研究が行われています。その結果、女性の年齢が上がれば上がるほど、正常な染色体を持つ受精卵の割合は減り、特に40歳になると約10%以下にまで低下すると言われています。つまり40歳を超えると、たとえ10個の受精卵が得られたとしても妊娠し出産できるのはそのうちの1個あるかないかなのです。

 アンチエイジングを謳うサプリメントは数多く販売されていますが、こうした加齢による卵子の老化を根本的に止める方法はありません。また、これは女性側だけの問題ではありません。男性も加齢とともにDNAが損傷している精子の割合が増加し、不妊につながることが最近の研究で報告されています。

 治療を開始する年齢が若ければ若いほど、妊娠できる可能性は高くなります。もしいま、すこしでもお子さんができないことで悩んでいらっしゃるのなら、不妊期間に関係なく夫婦で病院を訪れ、検査、治療を受けてほしいと思います。

小川誠司

小川誠司

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

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