科学が証明!ストレス解消法

5人に4人が「何らかの精神的な問題」を抱えた経験がある

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人生って、なんだかややこしいですよね。思ったようにうまくいかず、気分がめいるなんて日常茶飯事。比べてはいけないと分かっていても、隣の芝生が青く見えてしまい、自分の現状に対して不安やイライラが募ってしまう。うまくいかないから、人生なのかもしれません。

「どうして自分はダメなんだろう」「なんでみんなのようにできないんだろう」――。そんなことを考えてしまうこともあると思います。アメリカのデューク大学のシェーファーらは、「人間のほとんどが、一生のうち一度は精神を病む」と唱えています。つまり、落ち込んだり、気がめいったりするのは、人間である以上当たり前。疲れてしまうのは、誰にだってあることなのです。

 約1000人を対象としたシェーファーらの調査(2017年)は、とても興味深い結果を教えてくれます。生まれてから中年期に至るまでの精神面での健康を追跡し記録していったところ、83%が「何らかの精神的な問題を抱えた経験がある」と回答したそうです。

 5人に4人が精神的な問題を抱えた経験があるのですから、「どうして自分はダメなんだろう」と過度に自己を責める必要などありません。自分だけではなく、周りの人もへこんだ経験を抱えていると考えれば、少し気持ちが楽になるはず。自分のペースで、落ち込んだ気持ちを浮上させればいいのです。

 一方、何らかの精神的な問題を抱えた経験がない17%未満の人たちとは、どんな人なのか気になるところです。生活に余裕のある人、お金をたくさん持っている人、あるいは高い知性を持ち優秀な企業に勤めている人……などを想像しがちですが、そうではありません。それらの人たちに共通している点は次の2つでした。

 1つは、精神疾患を経験したことのある家族がほとんどいない点。もう1つは、当人のもともとの性格で、たとえば幼少期に自己統制にたけていたり、多くの友人に囲まれていたという点でした。前者は変えられない事象ですが、後者は変えられる事象です。気持ちさえあれば、誰だって友人を増やせます。

 ただし、当コラムでも触れたように、単に友人を増やすのではなく、あなたが心を開ける理解者をつくることが肝要です。親友をつくる――その過程があなたの気持ちに安らぎを与えてくれる良薬となり、深く沈んだ気持ちを引き上げてくれる力となります。

 また、日本が心の病を骨折や風邪などと同じように扱う成熟した社会になることも重要でしょう。リンネ大学のヤングビストらが行った研究(2016年)では、「精神を病んでいる人に、毎月50ユーロ(約6500円)を9カ月間“投与”したところ、不安やうつ症状が減り、人間関係や生活の質が向上した」という研究結果もあるほどです。

 現代社会において心の闇と貧困や格差が密接につながっている証左ともいえます。それだけに、心にゆとりをもたらす程度のお金を支給するだけで社会は変わるかもしれない。ほんの少しのお金、そして寄り添う気持ちがあれば、人は再浮上できるのです。どうぞ忘れないでくださいね。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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