Dr.中川 がんサバイバーの知恵

大腸がんだった大島康徳さんは70歳で…高身長の人は生活改善を積極的に

大島康徳さん
大島康徳さん(C)日刊ゲンダイ

 中日や日本ハムで活躍した野球解説者の大島康徳さんが大腸がんのため亡くなりました。享年70。最期まで前向きにがんと向き合ってブログを更新し続ける姿は、多くのファンやがん患者に勇気を与えたと思います。

「今後の人生を前向きに生きる為に病気を公表することも決意しました」

 2017年2月にブログにこうつづり、ステージ4の大腸がんと肝臓への転移を公表。すでにもとの大腸がんは手術で切除されていて、その後は抗がん剤治療を続けながら、元気に生きる姿を投稿されていました。

 それから4年あまりの最期だったわけですが、ぜひ皆さんに知っておいていただきたいのは、1年間に約16万人が発症する大腸がんの原因です。生活習慣的な要素が強く関わっています。つまり生活改善で発症を予防できる可能性があるがんなのです。

 飲酒と喫煙が最もよくありません。どちらも、確立しているリスク因子で、重ねるのは相乗的なダメージに。同じ野球界で連続出場世界記録を持つ鉄人・衣笠祥雄さん(享年71)が2018年4月、大腸がんで亡くなったとき、酒豪で愛煙家だったことを球界関係者が語っていました。どちらも半端ない量だったそうです。

 ほかにどんなリスクがあるかというと、肥満がひとつ。実はメタボを促進させる生活習慣がよくなくて、欧米では肉食、特にハムやソーセージなどの加工肉がリスクになります。

 衣笠さんも大の肉好きでワインと一緒に楽しんだそうです。

 ただし、日本では、欧米ほど加工肉を食べないので、データとしては密接な関係がありません。加工肉好きの方が注意する程度でいいでしょう。

 逆にいうと、メタボを改善する運動は、大腸がん予防としても効果的。ほかには、食物繊維や魚の摂取も有望で、カルシウムやコーヒーも効果的といわれます。

 生活習慣とは関係ありませんが、意外なところでは大島さん(182センチ)のような高身長もリスクのひとつ。英国の中年女性130万人の追跡調査で、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、腎臓がんなど10種類のがんで、高身長ほど高リスクに。

 国立がん研究センターの疫学研究でも同様の結果が出ています。男性は、身長168センチ以上のグループは、160センチ未満よりがん全体の死亡リスクが17%高い。身長が5センチ高くなるごとに4%リスクが増しています。

 生活習慣は身長よりはるかに大きな影響があり、改善が可能です。身長が高い人は、身長のリスクを気にするより、生活習慣の改善に力を入れるといいでしょう。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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