がんと向き合い生きていく

乳がんで妻を亡くし「時間が解決してくれる」と言われたが…

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 つい最近、奥さまを乳がんで亡くされたAさん(67歳・男性)のお話です。

 奥さまは手術を受けてから5年間、闘病を続けていました。背中に痛みがあって入院され、およそ1カ月が経過して少し痛みが治まってきたところで亡くなられました。

 Aさんは、まさかこんなにあっけなく亡くなるとは考えてもいませんでした。担当医から、骨や肝臓などへの転移があることは聞いていましたが、詳しく説明されていたわけではありません。コロナ禍もあってか面会時間が制限されていて、奥さまとはそれほど話も出来ませんでした。

 亡くなった後、担当医から「がんが高度に進行した状態だった」と説明されましたが、Aさんには何だか言い訳がましく聞こえました。

「それにしても、もっと看病をしてあげたかった。痛い背中をさすってあげたかった。何も出来なくとも、もっとずっと病室にいてあげたかった」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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