科学的根拠に基づく「老化を遅らせる」4つの方法 研究者が指南

食事の内容や取り方で「老化度」が変わる
食事の内容や取り方で「老化度」が変わる

 老いとともに病気のリスクは高くなる。しかし、そのリスクを下げる方法が、国内外の研究で明らかになっている。「老けない人は何が違うのか」を最近出版した昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門主任教授の山岸昌一医師に話を聞いた。

「老化とは、体の主要な構成因子であるタンパク質の劣化です。タンパク質の品質が維持されれば、老化のプロセスが抑えられることは研究でも明らか。では、タンパク質の品質を劣化させる引き金はというと、それは糖化と酸化なのです」

 糖化とは、体内で過剰になった糖がタンパク質にくっつくこと。これが長年続くと、タンパク質が変性して劣化した物質「AGE(エージーイー=終末糖化産物)」になり、その蓄積が老化を促進させる。

 一方、酸化は物質が酸素と結合して変化すること。酸素の一部が「活性酸素」に変わり、それが過剰になると慢性炎症を起こし、タンパク質を傷つけ劣化させる。

「活性酸素は生体内にある抗酸化酵素などにより速やかに除去されますが、酵素もタンパク質なので、糖化でAGEが増えれば、活性酸素の除去を十分に行われなくなります」

 さらに、全ての細胞の表面にはAGEと結合する鍵穴(RAGE=レイジ)が存在し、AGEがRAGEと結びつくと細胞に慢性炎症が起こる。その過程でも活性酸素が産生され、活性酸素によって局所でAGEが作られ、鍵穴RAGEが増える。つまり、「糖化でAGE増加」→「酸化が進み活性酸素増加」→「慢性炎症」→「活性酸素産生」→「AGE増加」という悪循環が生じる。

 AGE増加による老化は、見た目の変化はもちろん、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症、アルツハイマー型認知症、うつ、脂肪肝、歯周病、がん、感染症などの病気の発症リスクを上げる。

 オランダで7万人以上を追跡した研究では、開始時は健康であっても、AGEの体内量が多い人は4年後、死亡率が5倍高いとの結果が出ている。

「一度できたAGEは元には戻らず、簡単に体外に排出されません。ただし、AGEは食事内容や食事の取り方、生活習慣で蓄積しないようにできます」

 AGEを増やさない方法は次の通りだ。

■高GI値の食品の取り方に気を付ける

 GI値が高い食品は、食後、血糖値を上げやすく、AGEを作りやすい。主食では白米、食パン、餅、うどん。砂糖や果糖も該当する。

「時には、GI値が低い玄米や雑穀を取るようにし、食物繊維が豊富なまいたけやブロッコリーなどの野菜から先に食べるようにすれば、血糖値の急上昇を抑えられる」

■糖尿病の人は治療をしっかり受ける

 糖尿病で血糖コントロールが悪いと、血中の糖が過剰になり、AGEがたまりやすい。

■AGEが多い食品・増やす調理法を避ける

 AGEは体内で作られるだけでなく食材中にも含まれていて、加熱調理で増える。

「揚げ物、焦げ目が付いた食品、インスタント食品やスナック菓子、ミートボールのような加工肉・加工品や調理済み食品は、食品自体にAGEが多い。患者さんには、『素材の原形をとどめていない、何でできているか分からないものはできるだけ取らないようにしてください』と話している」

■運動不足、睡眠不足、ストレス喫煙に注意

 いずれもAGEを増やす生活習慣。睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを崩し、コルチゾールやアドレナリンといったホルモンの分泌を促し、高血糖を引き起こしてAGEを蓄積させていく。活性酸素を生じさせることも明らかにされている。

 できることから始めよう。

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