人生に勝つ性教育講座

ベートーベンの難聴の原因 昔は先天梅毒説が有力だったが…

難聴は20代後半から徐々に悪化

 そして40歳になる頃にはほとんど音は聞こえなくなったのではないか、と言われています。44歳のとき、メトロノームの発明者が考案した補聴器を使うようになったそうです。ピアノのフレームに当てた棒を口にくわえ、振動を体で感じることまで試みていたといいます。その状態でも創作意欲は衰えることなく、それ以降も作曲を続けたそうですから凄い人です。

 そんなベートーベンは51歳のとき「黄疸」にかかります。それ以降、激しい腹痛、嘔吐、吐血に悩まされるようになり、1827年3月26日に亡くなります。翌日行われた解剖記録によると、肝硬変に加え、通常の3倍にまで膨らんだ脾腫、胆のう炎、膵炎が確認され、頭蓋骨は正常の2倍ほどの厚さで、聴神経がそれにより圧迫されて萎縮がみられたそうです。

 そのことから、難聴は副甲状腺機能亢進症を合併した骨パジェット症と痛風、さらにはこれらの苦痛から逃れるためのアルコールなどによるものという説もあります。骨パジェット症とは骨の新陳代謝の異常により、骨が変形したり、もろくなったりする病気です。骨の変形に伴う痛みや頭痛、噛み合わせの問題、聴力障害、脊柱管狭窄症などを引き起こします。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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