科学が証明!ストレス解消法

ボーっとしているときほどアイデアがひらめきやすくなる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「チコちゃんに叱られる!」(NHK)のお決まりのフレーズ、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」。たしかに、ボーっと生きていると、あっという間に物事は移り変わっていきますから、好奇心や探究心は大切でしょう。とはいえ、常にアンテナを高くして生活するのは疲れてしまいますから、時にはボーっとすることも大事。

 ワシントン大学のレイクルらの研究結果(2001年)に、「ボーっとすると脳は平常時の15~20倍のエネルギーを使うため、アイデアも湧きやすくなる」という報告があります。研究によれば、何か行動をしているときと、ボーっとしているときの脳の動きを比較したところ、後者の方が記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたといいます。

 身近な例なら、トイレに行ったときを想像してください。ふとアイデアが湧き出た経験はありませんか? 実はこれこそ、ボーっとしたことによるたまものだと、研究ではうたっています。

 それにしても、なぜこういった現象が起きるのでしょうか?

 何かをしていると、その行動をするために、脳の必要な部位に多くの血液が流れます。その一方で、その他の部位は鈍くなります。つまり、ボーっとすると脳の一部に血流が向かうのではなく、均一的に血液が流れるため、結果的に使われていなかった部位にもエネルギーを行き届かせられ、ひらめきやすくなるのです。

 現在、脳内のさまざまな神経活動を同調させる働きを持つ、複数の脳領域で構成される脳の働きを「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼んでいます。これまでボーっとしているときは、脳が運転停止をして休んでいる状態だと認識されていましたが、実はアイドリング状態よろしく、このネットワークが常に稼働していることが明らかになりました。この状態は平常時の15~20倍のエネルギーを使うというから驚きです。

 何かに没頭しているときは、集中力も上がり、目的に向かってまっすぐに進んでいきます。言うなれば、脳は高速道路を走って目的を達成しようとフル回転しているようなものです。一方、脳のデフォルト・モード・ネットワーク状態は、普段使わない下道を通るようなもの。サービスエリアにはない隠れた名店を発見する――すなわち思わぬアイデアにめぐり合える可能性が高まるのです。張りつめて仕事をするのではなく、ときにはオフの状態をつくることが大切というわけです。

 ちなみに、ボーっとするには、砂時計を見つめる、お茶を入れる、クイックルワイパーをかけるなど、何でも大丈夫です。あとは、国会中継を見るのもおすすめかも。

 ただし、棚からぼた餅が落ちてくるには、ぼた餅がなければいけません。デフォルト・モード・ネットワーク状態で、脳の各所にエネルギーが行き渡っても、ぼた餅(アイデア)がなければ降ってはきません。そのためにも、好奇心や探究心を忘れないようにしてくださいね。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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