新型コロナ 重症化を防ぐ最新知識

新型コロナは「感染」と「重症化」と「死亡」が直結しなくなりつつある

4回目の緊急事態宣言がでてから初の土曜日の渋谷スクランブル交差点の人出
4回目の緊急事態宣言がでてから初の土曜日の渋谷スクランブル交差点の人出(C)日刊ゲンダイ

 東京都は16日、都内の新型コロナ新規感染者が1271人だったと発表した。都内で1日に1000人を超えるのは3日連続で、1週間前の金曜日より449人多くなった。16日までの7日間平均の946.3人は、今年4月から5月にかけての第4波のピークを上回ったという。

 これを年代別に見ると、10歳未満が53人、10代が109人、20代が431人、30代が265人、40代が201人、50代が142人、60代が40人、70代が17人、80代が9人、90代が3人、100歳以上が1人。全世代に感染が広がっている感がある。

 こういうデータを見せられると多くの人が「大変だ」「怖い」という気持ちになるだろう。

 しかし、少し長いスパンで見るとまったく違う印象になる。

 例えば今年の都内の新規感染者数のピークは1月7日の2520人。それから比べると半減である。むろん3月8日の116人と比べると増えているのだが、新規感染者の大半は無症状か軽症である。それを考えれば短期的な新規感染者数の増加だけを見て新型コロナの脅威とするのは正しいとは言えないだろう。

 しかも、ワクチン接種が進んでいる60代以降は少ないのである。

 肝心の入院者数や重症者数、死者数はどうか。16日の入院者数は2224人。これは6月20日の1270人より多いが、今年のピークだった1月12日の3427人の65%である。

■不安は重症化を招くリスク要因

 重症者数はどうか。都の重症者基準(人工呼吸管理またはECMOを使用している患者のこと。国の基準は「集中治療室等での管理または人工呼吸器管理が必要な患者」)で集計した16日時点の重症患者は前日より4人減の53人。これも6月26、27日の37人よりも増えているが、1月20日の160人と比べれば3分の1以下である。

 死者数は今年1月31日の38人が、6月29日の3人を最後に0~2人が続いている。国全体の年代別データを見ても20歳未満の死者はいない。

 つまり、日本では、感染者増と重症化や死亡する人が必ずしも直結しなくなりつつある。

 これを新型コロナの政策変更に取り入れたのが英国だ。7月16日に5万1870人が感染、49人が死亡したにもかかわらず、ロックダウンを解除しつつある。ロンドンで開催されたサッカーのヨーロッパ選手権の準決勝、決勝は、1試合6万人の観客が入場。テニスのウィンブルドン選手権も、女子シングルス準々決勝から、観客を100%収容した。これも感染者と死者・重症化が直結しなくなったと考えたからだ。

 日本では感染と重症化・死亡が直結しないと言えるまでは、決して警戒心を緩めてはいけないが、世界的な流れは新規感染者数に一喜一憂する段階から別のステージへと進みつつある、と考えてもいいのではないか。

 既に新型コロナ感染症の重症化のメカニズムは明らかになりつつある。ウイルス感染への強力な免疫反応が炎症性サイトカインの過剰産生につながり、それがサイトカインストームを発生させ重症化する。このときインターロイキン6(IL-6)やIL-6アンプが活性化する。

 その一方で、リンパ球が減少する。それが重症度と死亡率に関係する。また、死亡した患者は免疫に重要なT細胞が減り続ける。さらに好中球の数は生存者よりも死亡者の方が多く、好中球対リンパ球比は重症度の予測因子と考えられることなどもわかってきた。

 こうした知見をもとに、薬の選択が行われ多くの成果を上げている。

 不安や恐れはサイトカインストームの起きやすい体に変えることにつながり感染後重症化を招く。私たちにできることは新規感染者増に一喜一憂することなく「規則正しい生活」「バランスのとれた食事」「十分な睡眠」に努めること。それこそが万一感染したときの重症化を防ぐ底力になる。

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