コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

次世代遠近両用メガネ「タッチフォーカス」ワンタッチで切り替え

次世代遠近両用メガネ「タッチフォーカス」
次世代遠近両用メガネ「タッチフォーカス」(提供写真)

「手元を見るたびに老眼鏡にかけ直すのは面倒」

「遠近両用だが、近方を見るときの下目遣いのしぐさに老いを感じる」

 メガネをかけている人なら、これらのわずらわしさは誰もが実感していることだろう。メガネは視力を矯正する身近な医療機器。そんなQOV(クオリティー・オブ・ビジョン=視覚の質)の向上に役立つ、次世代遠近両用メガネ「タッチフォーカス」がシニア層を中心に好評だ。

 どんなメガネなのか。開発した総合化学メーカー、三井化学(東京・港区)の新ヘルスケア事業開発室の村松昭宏氏が説明する。

「タッチフォーカスは、累進レンズと電子液晶レンズを融合させた次世代の累進メガネです。普段は『遠・中』の累進レンズのメガネとして使い、必要に応じてフレームのこめかみ部分にあるタッチセンサーに約1秒触れると、近方用度数となる電子液晶レンズが中心部に表示され、手元の視界が広くクリアに見えるようになります。ですから従来の遠近両用メガネのように、手元を見るために視線を大きく下げたり、メガネをずらしたりする必要がないのです」

 見た目やメガネの重さ、レンズの厚さなどは一般のメガネとほぼ変わらない。しかし、フレーム内の狭い空間には電子回路が格納されており、電動によって累進レンズから電子液晶レンズの視野に切り替わる。フレームのつるの右側先端に取り外し式のバッテリーが内蔵されており、左側のつるの先端には予備のバッテリーが収納できる。バッテリーは1回の充電で約10時間の連続使用が可能で、電子液晶レンズの稼働が1日1時間とすると、週1回程度の充電で済むという。

 それにしても、どのような仕組みで電子液晶レンズの度数が変わるのか。

「レンズは2枚の樹脂製レンズの間に、電気を通す透明な薄い膜や厚さ3ミクロンの液晶などを挟み込んだ9層構造をしています。スイッチオフのときは液晶の分子配列が水平に寝ていますが、オンにすると電圧で分子配列が垂直に立って、近方に合わせた度数に切り替わるのです」

 タッチフォーカスなら、遠くのグリーンから足元のボールの状況、そして手元のスコアブックまで、さまざまな情報を「見る」ことで状況判断が求められるゴルフや、仕掛けやウキ、潮の動きを見なければならない釣りなどの趣味もストレスなく楽しめる。百貨店に入るメガネ店を中心に全国約80店舗で販売されている。価格はプラスチック製のセルフレームが27.5万円(税込み)、チタンフレームが31.9万円(同)。

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