人生に勝つ性教育講座

「梅毒を武器に敵と戦った女性」を描いたモーパッサンの背景

 なんともすさまじい話ですが、現実にありそうなことでもあります。HIVが騒がれた頃、行きずりの女性と一夜を共にした男性がふと目覚めると、女性の姿はなく、鏡台の鏡に口紅で「エイズの世界にようこそ」と書かれていてゾッとした…なんて都市伝説があったことを思い出します。

 作者のモーパッサンは代表作の「女の一生」をはじめ、42歳で亡くなるまでに300を越す中短編、6編の長編、3冊の旅行記、250に及ぶ時評文、共作を含め2編の戯曲を残した作家です。若い頃に普仏戦争に従軍し、敗走の経験があり、従軍中の体験を元にした作品を数多く残しています。「二十九号の寝台」はそのひとつです。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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