新型コロナワクチンの疑問に答える

東京五輪 デルタ株の流行地域からの選手の対応は万全なのか

空港でも接触は避けられない(成田に到着、ポーランド代表や関係者)
空港でも接触は避けられない(成田に到着、ポーランド代表や関係者)/(C)共同通信社

 五輪組織委によれば、来日中の選手やスタッフの陽性者が、今月1日の公表開始から通算71人に上った(20日時点)。感染対策として一般国民との接触を断つ「バブル方式」が採用されたが、止まらない陽性者の報告に不安が拭えないままのスタートとなった。

 競技が始まれば各国の選手や関係者が随時、入国する。1日で数千人規模が空港に降り立つ日もある。

【Q】デルタ株の流行が深刻なインド、タイ、インドネシアをはじめとする東南アジアからの選手の入国は懸念事項のひとつ。流行地域からの選手の対応は万全なのか

【A】「デルタ株の流行地域からの選手や関係者は、本来なら極力参加を控えてもらうのが感染予防としては適切です。2回のワクチン接種済み、毎日のPCR検査実施は当然ですが、たとえ入国時に陰性だったとしても、最初からグループ単位で移動させるのはリスクが大きい。個々の選手を2週間隔離してから、チームに合流させるくらいの徹底をしてほしいですね」

 すでに選手村に入っているアスリートの陽性者は3人。うち2人は南アフリカ男子サッカー代表だ。濃厚接触者が18人いたが、日本代表との試合は実施された。

「集団競技のサッカー、バレー、ラグビー、バスケットは選手同士の体の接触やボールの共有があります。大声も出しますし、汗も飛び散ります。ウイルスが拡散しないわけはない。症状がなくPCR検査でもひっかからなかったからといって安全とは言い切れず、選手間の感染が止まらない場合は、途中で開催を中断する決断も求められます」

 ルール上は濃厚接触者も「6時間前に陰性」なら試合に出場できる。そのリスクは計り知れない。

【Q】五輪は9割以上の競技で無観客になったが、プロ野球やJリーグは有観客、何が違いますか?

【A】「日本国民同士が“密”になることよりも、日本人を含めて、あらゆる国・地域から来た選手やスタッフが、競技をしたり、交わったりすることが問題なのです。選手村でも完全に接触を遮断することは不可能。コロナウイルスは現在、変異を繰り返して生き残っているところですから、今回、世界の人流が日本で盛んになることで、新たな変異株ができたり、持ち込まれたり、新種のウイルスが出現する可能性があります。単純に感染者が増えるリスクだけではないのです」

 すでに、外部との接触を遮断する「バブル方式」は機能していない。米女子体操チームは選手村を“脱出”し、ホテル宿泊を決めた。銀座や六本木の飲食店では外国人の姿が増え、空港では一般旅行客との接触や、警備の目をかいくぐったファンが選手にサインを求めるなど、問題が報じられている。

【Q】開催期間中、我々国民がやるべき対策は?

【A】「できる限り外出を自粛し、外部との接触を減らすこと。密になった場所で飲食しながら観戦したりせず、選手が見たくても空港などには行かず、とにかくテレビで我慢してほしい。そしてワクチン接種の機会があれば、特に首都圏近郊の方は夏休み中に受けてほしいです。会期中に変異株が蔓延しますから、2回目の接種(2週間後には効果が出る)を早く済ませるほど、予防やかかった場合の重症化リスクを減らせます」

 感染対策もこれからが本番だ。

奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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