夜中にトイレで起きたくない! 専門医が教える解決ポイント

朝まで熟睡したい(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 就寝後に1回以上トイレで起きる「夜間頻尿」は、生活の質を下げるだけではない。一晩に2回以上トイレに行く高齢者は、死亡率が2倍との報告もあるのだ。「夜中のトイレに起きない方法」を出版したマイシティクリニック(東京・新宿)院長で泌尿器科医の平澤精一医師に話を聞いた。

「夜間頻尿は、いつか自然になくなるものではありません。しかしちょっとした生活の改善で、朝までぐっすり眠れるようになる人は少なくない」

 夜間頻尿は主に「夜間多尿」「睡眠障害」「膀胱蓄尿障害」の3つのタイプに分けられる〈表〉。特に高齢者では、夜、尿量を抑える抗利尿ホルモンの分泌量が減って夜間の尿量が増えたり、筋力低下で下半身に水分がたまり、就寝時に横になった時の尿量増加につながりやすい。

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)による睡眠障害、過活動膀胱や前立腺肥大による膀胱蓄尿障害というように、病気が関係しているケースもあります。また、糖尿病で血糖値が高い人は、組織の細胞から水分を血管内に引き込もうとし血管内の水分が増えるため、昼夜問わず多尿になります」

 3つのタイプは、それぞれ重なる部分もある。

「睡眠の質を下げるアルコールで睡眠障害を起こし、夜間多尿にもなっている」というのだ。自分の夜間頻尿の原因を知り、それに応じた対策を講じることが大切。

「病気が関係していれば治療が最優先。薬の影響による夜間頻尿なら、薬の服用時間を変えるなどの手もあります。いずれでもなければ、食事、運動、睡眠が夜間頻尿をなくす鍵となります」

夜間頻尿には3タイプある(C)日刊ゲンダイ
食事・運動・睡眠

【食事】

 塩辛い料理は夜間頻尿につながりやすい。

「喉が渇いて水分を多く取るのに加え、体内の塩分量が増えると、それを薄めるために体液の量が増加。塩分過多は多尿、頻尿どちらも招きます」

 利尿作用の高い飲料(アルコール、カフェインが多いコーヒーや紅茶など)、過活動膀胱を引き起こしやすいといわれる炭酸飲料水や柑橘系飲料は控えめにする。

「極端な水分制限もダメですが、取り過ぎにも注意です。『寝る前にコップ1杯の水を飲むと脳卒中や心筋梗塞にいいと聞いたので』と言う夜間頻尿の患者さんがよくいます。しかし、これは科学的根拠のない情報です」

 水を飲み過ぎればトイレに行きたくなる。「取る量」と「汗や尿で排出する量」のバランスを考えて水分摂取を行う。

【運動】

 筋力を上げ、下半身に水分をためにくくする。理想はウオーキングやスクワット。難しければ、就寝3~4時間前にあおむけ寝で足の下にクッションなどをあて、15~30分間足を心臓より高く上げる。下半身にたまった水分が上半身へ移動する。

【睡眠】

「睡眠障害」タイプには、睡眠の質を高めることが有効だ。まずは朝食。大豆製品や乳製品などに多いトリプトファン、鶏肉や魚に多いビタミンB6は良質な睡眠に必須のメラトニンの材料になる。起床後メラトニンが分泌されるまで14~16時間かかるので、朝に取るのが一番だ。

 次に、朝日を浴びる。

「体内時計の働きが調整され、夜しっかりとメラトニンが分泌されます」

 入浴は就寝1時間前。ブルーライトは睡眠の質を下げる。就寝前にパソコンやスマホは見ない。

「これらをやっても夜間頻尿が改善しないようなら、泌尿器科を受診してください。2020年に11年ぶりに夜間頻尿のガイドラインが改定され、さまざまな症状に対応した治療が確立されています。薬や行動療法、生活指導で改善を目指します」

 朝まで熟睡した時の爽快感を取り戻そう。

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