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コロナ禍で若い人にも増加 帯状疱疹を後遺症なく治すには

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今回は、日本人に比較的多い帯状疱疹についてお話ししましょう。

 帯状疱疹とは、水ぼうそうウイルスが引き起こす感染症の疾患です。子供の時に発症した水ぼうそうは治った後も水ぼうそうウイルスとして体内の神経節に潜んでいて、普段は私たちの免疫力がその活動を抑えています。ところが、疲労、ストレス、加齢などで免疫力が下がると、水ぼうそうウイルスが活性化し、神経の流れに乗って神経節から皮膚へと移動し、帯状疱疹を発症します。

 症状は、体の左右どちらか一方に生じるピリピリと刺すような痛み。そして、水膨れが帯状に表れたりします。免疫力が関係しているため、50代以上の中高年ほど発症しやすい傾向があります。ところが生活様式の変化で最近では全年代で患者が増えているようです。特に目立つのは、20~40代の子育て世代の女性の増加。新型コロナウイルスの蔓延により生活スタイルが変化し、ストレスが増えたことも原因ではないかと考えています。

 昔は子供が水ぼうそうにかかる病気だったため、子供と同居する大人では水ぼうそうウイルスに対する耐性がありました。ところが、近年、子供の数が減り、子供と同居する世帯も減ったため、水ぼうそうウイルスに触れる機会が少なくなり免疫が維持できなくなっています。それが若い年代での患者数増加につながっているとも考えられています。また、水痘ワクチンが義務化され子供の水痘が減ったのも大きな原因と考えられています。

 インフルエンザや風邪が寒い季節に蔓延しやすくなるのに対して、帯状疱疹は暑い季節にも発症しやすいのが特徴です。

 前述の通り、帯状疱疹の初期の症状はピリピリとした痛みで、体の左右のどちらかに出るのが特徴的です。多くは胸やお腹回り、首、顔に症状が表れます。最初は小さな水疱が出ますが、治療をせずに放っておくと、水疱の範囲が広がり、全身に散らばることもあります。こうなると痛みも相当強くなって、患部が衣服に当たるだけでも激しい痛みが生じるようになります。

 治療は早ければ早いほど効果的です。早い段階で治療をすると、痛みが悪化する前に症状を抑えられます。逆に、痛みを我慢して悪化してから治療を開始すると、薬の効きが十分でなかったり、痛みを完全に抑えられずに長期化するケースも。注意してください。

 治療は飲み薬で行います。今は帯状疱疹の効果的な治療薬が開発されていますから、早い段階で服用してもらえば、痛みも抑え、副作用(帯状疱疹後神経痛=皮膚の症状が治った後も痛みが残る)のリスクも少ないです。重症の場合は入院して抗ウイルス薬の点滴が必要になることもあります。がんの治療をしている人など免疫が弱っている方は重症化しやすいので早めに病院を受診しましょう。50歳以上の方は帯状疱疹ワクチンの任意接種が可能です。費用は2万円程度ですが、一度のワクチン接種で10年間程度有効とされています。

 ワクチンも重要ですが帯状疱疹の予防策は免疫力を低下させないこと。つまり、体を疲れさせない、ストレスを受けない、ためこまないことです。疲れを感じた時はできるだけ睡眠を取るなど、心身の休養をしっかり取るように心掛けてください。今年の夏も猛暑となるようです。夏バテは免疫の低下につながりますので注意しましょう。

葉山惟大

葉山惟大

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