医学的検証試験で証明 ワクチン効果を高める「感情日記」のススメ

感情日記は本来持っている感染免疫も高める効果が(写真はイメージ)
感情日記は本来持っている感染免疫も高める効果が(写真はイメージ)

「ワクチンは打ったけど、変異株が怖い」「ワクチンに抵抗はあるが、感染もしたくない」――。そんな方は、ワクチンの効果を高めるといわれる「感情日記」を書いてみてはどうか?

 気軽に始めてもらうために“感情日記”という言葉を考案し、臨床実践するのは、「日記を書くと血圧が下がる」の監修者で精神科医の宗未来医師。欧米では“感情筆記”と呼ばれ、かなり前から盛んに研究も行われている。宗医師は言う。

「感情日記の効果は、終末期がんの痛み緩和やPTSDへの自助効果など最高水準のエビデンスとされるメタ解析で示されています。血圧低下、痛みや不眠の改善など心身の健康に対しても多くの医学的効果が報告されている。私の留学先のロンドン大学では、術後の傷の回復スピードが速まるという臨床試験結果が報告されていました」

 感情日記は、起こった出来事だけでなく、その時の本音の感情もあえて書き出すもの。深層下のありのままの本音を感じることは心身の健康に良い影響を及ぼす。落語などで心から笑うと健康に良いと言われるように、ポジティブ感情も健康に良い。しかし、比較的感じやすいポジティブ感情に対して、ネガティブ感情は苦痛を伴うので避けて押し殺しがちだ。

「そもそも人間の感情はネガティブな方が質量ともに圧倒的に多い。ただ、ネガティブな感情であっても本音であれば、ありのままに感じきることで自然と消えていく。しかし苦痛が強く目を背けてばかりいると、押し殺された一次感情は、自己嫌悪や嫉妬、虚無、恨みといった小難しい思考の混ざった二次感情を増殖させていくのです」

 二次感情は脳がつくり出したノイズのため、自然には消えず、無駄な緊張や興奮からストレスホルモンの分泌を過剰にし、自律神経や免疫反応が正常に働かなくなる。それを、感情日記が改善するのだ。

■ウイルスに対する感染免疫も高める

 感情日記がワクチンの効果を高めることは、厳密な医学的検証試験で証明されている。B型肝炎ワクチンを受ける人々を無作為に2群に分けた研究ではワクチン接種前に、一方の群に感情日記を、もう一方の群に感情を排した日常日記を書かせた。すると感情日記の群は、4カ月後と半年後の両方で有意に高いワクチン抗体価を示した。

「ワクチンには、不眠などの心理ストレスにより効果を失うワクチンブレークと呼ばれる現象が存在します。逆に言うと、ワクチン接種者に心のケアをしたら予防効果を高めることが期待できるのではないか。コロナワクチンでの証明ではないので解釈に注意は必要ですが、その疑問に、この研究結果はひとつの答えを与えるものです」

 ワクチン接種には抵抗があるが、コロナにも感染したくないという人にも感情日記は役立つ可能性がある。感情日記は自分本来の持つ感染免疫も高めるからだ。

「ヘルペスウイルス感染者を無作為に分け、感情日記と感情を含まない日常日記を書かせて比較した研究では、感情日記の群ではウイルス活性の沈静化(抗体量の減少)が認められていたのに対し、日常日記群ではウイルス活性が逆に高まっていたのです」

 感情日記の感染免疫に関する厳密な医学的検証はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)でも同様に行われている。感情日記の群だけに、HIVに対する免疫の主役であるCD4+リンパ球が一貫して増加するという現象が認められ、実際にHIV量も減少していった。

「感情日記は、だれにも詳しく話してこなかった過去の出来事を、できる限り掘り下げて、その時の本音の感情を呼び覚ましながら書くのがポイントです」

 欧米の研究では、1回20分程度を3~4回としているのが多い。そんな感情日記をコロナ対策に役立ててはどうか。

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