新型コロナワクチンの疑問に答える

ワクチン接種後の死亡事例751件 因果関係は本当にない?

一時金が認められた事例はない
一時金が認められた事例はない(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナワクチン接種の副反応として、死亡事例との因果関係を懸念する声は多い。政府は、国の健康被害救済制度によって、遺族に4420万円を一時金として支払うと公表しているが、現時点で該当するケースはない。

 全国のワクチン接種者数は約6723万人(7月26日時点)に上る。うち1回目は約4042万人、2回目は約2680万人だ。一方で厚労省は、コロナワクチンの接種後の死亡者数は今年2月17日~7月21日で751人と報告している。

【Q】接種後の死者数は多くないか?

【A】「季節性ワクチンに比べて数が多いと言えるでしょう。厚労省は令和元年シーズン(2019年10月1日~20年4月30日)に報告されたインフルエンザワクチンの接種者約5649万人のうち、死亡報告数を6人としています。ただし重症例でいえば、09年のリポートによると、インフルエンザワクチンは4150万人が接種して120例の重篤な副反応、死亡9件と報告されています。季節性ワクチンも副反応は少なくないのです」

【Q】ワクチン接種と死亡の因果関係が認められないのはなぜなのか?

【A】「たとえばワクチンを接種してから1時間以内にアナフィラキシーショックや心停止などを発症したとします。それでも明らかにワクチンが重篤な副作用を起こし死亡した、と証明するのは医学的に非常に難しい。確かにコロナワクチンのスパイクタンパクはヒトの血小板を減少させると報告されています。血小板には複数の血液凝固因子が含まれ、血液の流れに影響を及ぼします。血栓症、心筋梗塞、心筋炎などいくつかの重篤な副反応があることは証明されていますし、アナフィラキシーももちろん起きています。ただし現在のところ、国内の接種例の大半は高齢者です。たまたまワクチンの投与後に軽い心臓発作を生じ、それが重症化してしまう例はあると思いますし、間接的な影響で亡くなった例もそれなりにあると考えられますが、もともと持病を抱えていたり血管が弱っていたりした場合、ワクチンが主だった原因で亡くなったとは判断できません。ワクチンの普及を推進している国としては、正確性が曖昧なものを『副反応が原因』と判定できない。『因果関係は不詳』と報告するほかないのでしょう」

【Q】認められる例があるとしたら?

【A】「遺伝的な要因や持病もない健康な10代、20代がワクチンの接種後30分~1時間以内に血栓症などの症状で亡くなる事例が10人以上になれば、国も本格的に調査せざるを得ないでしょう。リスク回避という点では、政府はアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの接種を見送っています。これはmRNAワクチンに比べて、血栓症が起きる頻度が高いことが証明されているから。しかし、新型コロナ感染症に治療薬がなく、多くの国民が受けなければパンデミックは収まらないのも事実です」

 ワクチンには、コロナ感染後の重症化を防ぐ効果もある。血栓症の不安がある人は、まずは主治医などと相談だ。

奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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