新型コロナ 重症化を防ぐ最新知識

AZワクチン「血小板減少症を伴う血栓症」の対策は大丈夫なのか

安全基準は人によって異なる
安全基準は人によって異なる(C)日刊ゲンダイ

 厚生労働省は先月30日、英アストラゼネカ製の新型コロナワクチンを、40歳以上に公費で接種する案を厚生科学審議会のワクチン分科会に提案した。

 アストラゼネカ製ワクチンは、風邪症状を起こすアデノウイルスをベクター(運び屋)として使うウイルスベクターワクチン。風邪ウイルスは体内細胞に自然と入り込めるため新型コロナの遺伝情報をスムーズに届けられる利点がある。アデノウイルスは鼻炎、咽頭炎、結膜炎を引き起こし、肺炎を起こすこともあるため、体内で増殖しないよう処理されている。

 その発症予防率は約70%。95%前後の米ファイザー製や同モデルナ製より劣る。ただし、2~8度で6カ月間冷蔵保存できるため、ファイザー製やモデルナ製に比べて輸送や管理がラクな面がある。気になるのは接種後に血栓症で死亡する事例が出ていることで、欧州の一部では60歳未満への接種を取りやめるなどの動きが出ている。

 そのため、日本ではアストラゼネカ製は5月下旬、モデルナ製と同時に製造販売が特例承認されたにもかかわらず国内では使われてこなかった。

 今回政府がアストラゼネカ製の使用に踏み切るのは、事情が変わったからなのか。

 そうではない。厚生科学審議会のワクチン分科会に提出された資料によると、欧州医薬品庁が設置している「ファーマコビジランス・リスク評価委員会」は「アストラゼネカ社のワクチン接種者における血栓症関連事象の発生は稀であるが自然発生率を超えており、当該ワクチン接種と血小板減少症を伴う血栓症との因果関係は妥当」と結論付けている。

 つまり、稀とはいえ血液を固める作用のある血小板が減少しながら、血栓ができる可能性のあるワクチンを今回、接種しようというわけだ。

■新型コロナワクチンはすべて「特例承認」

 厚労省は日本脳卒中学会、日本血栓止血学会が、診断・治療の手引を作成・公表しており、万一の場合の体制は整っていると言いたげだが、本当に大丈夫なのか?

 ちなみにアストラゼネカ製の接種後の血栓症関連事象について英国データでは次のように報告されている。

 1回目100万回接種について18~49歳は22.1件、50歳以上で11.2件。2回目では18~49歳で0.9件、50歳以上で1.8件。

 これは現在供給不足に陥っているファイザー製、モデルナ製ワクチンの不足分を補うため無理をしているのではないか。

 とはいえ既にアストラゼネカ製ワクチンの添付文書の改訂も進んでおり、アストラゼネカ製ワクチンの接種が始まるのは時間の問題だ。

 改訂の主なポイントは該当者に「毛細血管漏出症候群(CLS)の既往歴のある者」を加えるほか、「重要な基本的注意」の項に、血小板減少症、CLS、ギラン・バレー症候群に関する注意喚起を掲載。「副反応」には血小板減少も加えた。

 ワクチン接種で新型コロナ感染症に罹患する確率や重症化リスクを抑えられれば、高齢者や基礎疾患のある人の新型コロナ死を回避できる可能性がある。それを理由に政府は「副反応のリスクの方が、ワクチンを接種せずに新型コロナにかかるリスクよりもはるかに小さい」としてワクチン接種を推奨している。

 その理屈はわかる。しかし、副反応で問題が起きた時に直接の被害を受けるのは接種した本人で、健康は取り返しができない。まして、現時点では正規の「承認」が下りた上で使用されているワクチンはなく、すべては「特例承認」により使用されている。

 だからこそワクチン接種の判断は、個々人で異なるメリットとデメリットを見極めたうえで行う。今後はそのことがより大切になりそうだ。

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