コロナ後に「心不全死者4万人増」と学会が試算 心臓リハビリの重要性

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 心臓病を起こさない、再発させないためには、適度な運動が不可欠。特に心臓病の発症・再発・再入院予防を目指して行う運動療法を中心に行う総合的プログラムを心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)という。榊原記念病院顧問の伊東春樹医師(循環器専門医)に話を聞いた。

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「心臓リハビリが、心不全や各種心臓病に効果的であることは、多数の研究で証明されています」

 心血管病に関する48編の研究をまとめて解析した報告では、心筋梗塞の患者が心臓リハビリに参加すると、心血管病の死亡リスクは26%減少したという結果が出ている。

「米ミネソタ州オルムステッド郡の心筋梗塞患者1821例を6.6年間追跡調査した研究では、心臓リハビリ群は非心臓リハビリ群に対し、死亡率が56%、再発率が28%減少しました。さらにこの研究で着目すべきは、非心臓リハビリ群は生命予後が悪いのに対し、心臓リハビリ群は通常の人(ミネソタ州の予測生存曲線)とまったく同じ生命予後となった点です」

 血管の狭くなった部分を押し広げる治療として「ステント治療」がある。狭心症や心筋梗塞の治療に行うのだが、安定した狭心症でステント治療を受けた群と、心臓リハビリの群の予後を1年後に比較した研究では、心臓リハビリ群の方が心筋梗塞発症や狭心症の悪化などが少なかった。

「ステント治療群で予後が悪かった人では、ステント治療した以外の血管で動脈硬化が進行していました。心臓リハビリによって血管の内皮機能が改善し、血管の広がりが良くなる。それが、心臓の冠動脈硬化の進行を食い止めるのです」

 ただし、心臓リハビリの恩恵を受けられている人はごく限られている。国内の報告では、心不全で入院・外来リハビリを受けている患者は7.3%。通院が大変、心臓リハビリを行っている施設が少ない、民間や自治体のフィットネスジムに心臓リハビリを行える指導士(心臓リハビリ指導士、理学療法士など)がいないなどの理由がある。

「さらに今回のコロナ禍で、全国で心臓リハビリが7割ほど中止に追い込まれました。日本心臓リハビリテーション学会の試算では、心不全だけでも入院患者が年間12万人増え、死亡者が4万人増えると指摘しています」

 そこで、伊東医師が副理事長を務め、全国の医療機関の循環器専門医が役員に名を連ねる「NPO法人ジャパンハートクラブ」では「日本遠隔運動療法協会」と協力して、日本初のオンラインによる生活期心臓リハビリを7月から開始。心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症といった心臓病の治療を終えた患者の再発・再入院予防と、メタボや高血圧、糖尿病、脂質異常症といった心臓病のリスクを上げる生活習慣病進行予防が目的だ。

 なお、オンライン型の心臓リハビリと、施設通院型の心臓リハビリの有効性は同等と複数のメタ解析(科学的根拠の高い研究手法)の結果から有効性が示されている。

 心臓病を抱える人はもとより、健診でメタボを指摘された人は検討してみてはどうか。

■オンライン型の生活期心臓リハビリ、生活習慣病改善プログラムとは

 医師から処方された「運動処方箋」をもとに、心臓リハビリ指導士と健康運動指導士が心臓に負担をかけない有酸素運動(バイクこぎなど)を指導。オンライン上で患者の体調、運動中の心拍数や顔色をうかがいながら行う。患者同士もオンライン上でつながるのでモチベーションがアップする。

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