1週間で5000人以上が救急搬送 コロナ禍での熱中症対策のポイント

水分摂取はこまめに!
水分摂取はこまめに!(C)日刊ゲンダイ

 東京五輪はテレビ観戦。新型コロナウイルスが怖いから外には極力出ないので、熱中症なんて関係ない。そう思っている人も多いのではないか。しかし、それは誤解だ。外に出なくても熱中症にはかかる。今は新型コロナの感染拡大で病床が逼迫し、万一のとき、スムーズに治療を受けられない恐れもある。熱中症にならないためのポイントを弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。 

 総務省消防庁は、今月1日までの1週間に熱中症の症状で救急搬送された人が全国で5831人に上ったことを発表した。昨年同時期の2967人に比べ、2倍近くに増えているという。

 運ばれた人のうち、65歳以上の高齢者が約6割近くを占め、中等症の人が3割を超え、死者は8人に上った。発症場所で目立つのは家の中で、全体の4割以上だった。

「熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が壊れるなどして発症する障害のことをいいます。熱中症は症状により3つに分類され、Ⅰ度は、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の汗、こむら返りなどの症状が見られます。Ⅱ度は医療機関で診てもらうレベルで、頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下が生じます。Ⅲ度は入院加療が必要な段階で、意識障害やけいれんなどが起きます」

 熱中症は早期に気づいて適切に対処すれば防げる病気だが、高齢者は気づきにくいのだという。

「高齢者が熱中症になりやすいのは体温調節機能が低下していることに加えて、体の水分量が少ないことが理由として挙げられます。体の水分量が少なければ、汗で失った水分が少量でも熱中症にかかりやすく、重症化しやすくなるからです。しかも、高齢者は持病による熱中症リスクが高くなります」

 例えば、糖尿病の人は血糖値が高い血液を薄めるために水分が必要となり、それを排出するために脱水になりやすい。高血圧症の人は降圧利尿剤を服用していることが多いため水分不足になりがちで、塩分制限を受けているために定期的な塩分摂取が難しい。

「心臓が悪い人で降圧利尿剤を飲んでいる人も水分不足になりがちです。慢性腎不全の人は水分や塩分のコントロールがうまくいかずに電解質代謝が阻害されて水分や塩分不足に陥りやすい。皮膚疾患のある人だと、ただでさえ発汗作用が低下しているうえ、自律神経機能に影響がある薬剤を使用しているために発汗機能や体温調節機能が阻害される恐れがあります」

■室温28度を超えたら必ずクーラーを使用する

 高齢者の中で特に気をつけたいのが一人暮らしの人、認知症の人、活動的な人だ。

「一人暮らしだと熱中症症状に気づいてくれる人がいないため、症状が進むまでわからないケースが少なくありません。また、エアコンの使用を我慢する人が多いのも原因です。たとえ家族と暮らしていても昼間一人で過ごすことの多い人も気をつける必要があります。また、認知症の人は自分で暑さや症状に気づきにくい傾向にあり、たとえそれに気づいても適切な行動を取れない場合があります。活動的な人は『自分は健康に自信があり、大丈夫』と思うあまり症状が進行するまで我慢してしまい、必要な対策を怠ってしまいがちです」

 しかも、今年は新型コロナにより外出時にマスクをするため熱中症リスクが高くなるという。

「マスクの中で熱がこもりやすくなるばかりでなく、マスクをすることで呼吸回数が減り、呼気からの放熱がしにくくなるからです」

 では、熱中症から身を守るにはどうしたらいいのか?

「とにかく、こまめに水を飲むことです。お茶やコーヒーなどは利尿作用があるものもあり、熱中症対策の水分補給に適していないものもあります。当然ですが、ビールやお酒は熱中症対策にはなりません。経口補水液は念のため冷蔵庫に入れておくのはいいですが熱中症の症状が出てきたときや大汗をかいたときなどに飲めばよく、普段は水で問題ありません。暑さを感じにくい高齢者は、例えば1時間に1回など時間を決めて水分を補給するといいでしょう」

 クーラーは暑くなったらつけるのではなく、温度計を見て、室温が25度以上になったら使用を検討し、28度を超えたら必ず使用する。気温が高い日は寝るときもクーラーを使いたい。

「寝ている間に脱水症状になり、血液が固まりやすくなって起床時に脳梗塞を起こす場合があります。夜間頻尿が気にならなければ寝る前に水分を取るのもいいでしょう」

 なお、暑くて頭がボーッとしてきたと感じたら、首や脇の下、太ももの付け根など血管の集中する場所を氷などで冷やすことが大切だ。

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