コロナワクチン接種後1週間は激しい運動をしてはいけない 国内外で心臓障害の報告が

中日では与田監督も接種を終えている
中日では与田監督も接種を終えている(C)共同通信社

「どのくらい経てば運動してもいいのでしょうか?」――。新型コロナワクチンの接種が進む中、医療機関ではこんな質問が増えているという。厚労省は「接種当日は激しい運動を控えるように」としているが、それで問題はないのか。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

 7月上旬、中日ドラゴンズの木下雄介投手(27歳)がワクチン接種後に行ったトレーニング中に倒れ、治療が続けられていたが、今月3日に亡くなっていたことがわかった。接種から数日後、練習場でハードな運動をしているさなかに倒れて大学病院に搬送。心臓にトラブルが起こって脳にも影響が及び、人工呼吸器を外せない状態だったと「週刊新潮」で報じられていた。

 現時点ではワクチンとの因果関係はわかっていない。ただ、海外でもワクチン接種後に激しい運動をして倒れたケースが報告されている。シンガポールでは、6月27日にファイザー社製のワクチンを接種した16歳の男子生徒が、7月3日にスポーツジムで負荷の大きなトレーニングをしているさなか、心不全を起こして倒れたという。

 こちらもワクチンとの関連は検証中というが、ほかにもワクチン接種後に心臓障害を起こしたケースが12件報告されていて、そのうち7件が30歳以下の男性だった。これを受け、シンガポール保健省は「ワクチン接種後1週間は運動や激しい身体活動を避ける必要がある」と勧告した。それまで運動を控える期間は12~24時間としていたが、大幅に延長されたことになる。

 日本でも、ファイザー社製のワクチン接種後に心不全、虚血性心疾患、大動脈疾患、不整脈などで死亡した事例が200件近く報告されている。また、副反応が疑われる心筋炎や心膜炎を起こしたケースも31件の報告があり、そのうち13件は40歳未満だった。

 ワクチン分科会副反応検討部会は、国内の心筋炎関連事象(心筋炎・心膜炎)疑いに関して「因果関係が疑われている若年男性に係る事例では、引き続き全例、軽快又は回復が確認されている」としている。しかし、ワクチン接種によって心臓や血管に何らかのトラブルが起こる可能性がある以上、運動には注意する必要がある。

■無酸素運動が危ない

「基本的に運動は心臓に大きな負荷を与えます。体を動かせば心拍数は増え、心臓の収縮力が高まり、血圧も上がります。継続的で適度な運動は心臓にとって有益ですが、心臓にトラブルを抱えていたり、運動習慣がなかったりする中高年にとって激しい運動はリスクになります。とりわけ、ウエートトレーニングなど瞬間的に力を出すような無酸素運動は心臓に大きな負担をかけてしまいます。因果関係がはっきりしていないとはいえ、ワクチンの副反応として心血管系トラブルが疑われているとなると、ワクチン接種後の運動には注意が必要です。激しい運動が心筋炎やそれに伴う心不全の悪化、危険な不整脈の誘発、血圧急上昇による心筋梗塞や脳卒中発症のリスクになる可能性があります」

 心臓は、若い頃であれば継続的な運動やトレーニングによって形態的にも機能的にも適応して心機能も向上するが、中高年になって適応力がなくなると、過度な負荷に十分に耐えられなくなる。それだけに、高齢者や中高年はワクチン接種後の運動には特に注意したほうがいい。

「心筋炎や心膜炎の副反応疑いが報告されている若年層も含め、ワクチン接種後は1週間から10日間は運動を控えた方がいいと考えます。ワクチンに含まれるmRNAなどの成分やmRNAによって作られるスパイクタンパク質は数日で減り、体に生じる炎症は10日ほどで落ち着くと考えられるからです。実際、患者さんから『いつから運動してもいいのか』と尋ねられた時は、少なくとも1週間は様子を見るようにお答えしています」

 コロナワクチンの副反応は、まだはっきりしていない点がたくさんある。慎重に対応したい。

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