皮膚のお悩み 専門医がスッキリ解決

掌蹠膿疱症 手のひらや足の裏に水疱ができ関節の痛みも

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 小さな水疱や、分泌物が袋状になった膿疱が手のひらや足の裏にできる「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」という皮膚の病気があります。水疱や膿疱は人にうつすものではありませんが、見えやすいところに症状が出ることもあり、悩まれる患者さんも多いです。

 症状としては、チクチク、ジワジワといった痛み。痛みの程度は軽いものから、相当な痛みを伴うものまでさまざまです。中には、痛くて歩けないという方もいます。

 痛みは皮膚だけでなく、爪の周りや、ひどくなると胸骨や肋骨、さらに関節にまで出ることもあります。その因果関係はまだ明らかになっていないのですが、手のひらや足の裏に水疱ができる人で胸が痛いという症状を訴えることがあれば、皮膚科専門医に診てもらった方がいいかもしれません。

 掌蹠膿疱症の患者さんの男女比は1対2で、女性、特に30~50代に多く、約8割が喫煙者という特徴があります。ニコチンが皮膚の細胞や汗管を刺激し、炎症を起こすと考えられており、本人が吸っていなくても家族や身近な人に喫煙者がいる場合も発症リスクが高くなります。たばこだけが原因とは言い切れませんが、悪化要因なのは確実です。

 そのため、掌蹠膿疱症の患者さんには禁煙をお勧めしていますが、ストレスが多いなどの理由から喫煙をやめられない、受動喫煙者の場合、周囲の禁煙への協力を得られないなど、その人によってさまざまな習慣や理由があり、一方的に「やめろ」と言っても簡単にいかないのが現状です。

 そういう患者さんには禁煙外来を紹介するなどして、少しずつ禁煙できるよう、患者さんの環境にも配慮しながら治療を進めています。

 他の原因として、口腔内や喉の感染症が知られています。病巣感染といって、ある部位の慢性的な感染症が他の部位の疾患を引き起こすことを言います。

 掌蹠膿疱症では、へんとう炎や歯周炎が知られています。本人の自覚症状がないこともあるので耳鼻科や歯科に相談するといいでしょう。

 また、まれに歯科金属など金属アレルギーが原因の場合もあります。その場合は、原因となっている金属を取り除くことで治療が可能です。

 このように、喫煙や病巣感染、金属アレルギーなど要因が分かっている場合は、その要因を取り除くようにし、軽度であれば外用療法を用います。主には、ステロイド軟膏や活性型ビタミンD軟膏、紫外線療法も効果が高い治療法です。

 重度の場合は生物学的製剤という注射を使うこともあります。効果は高いものの、値段が高いのが難点。いずれの治療も保険適用となります。

 問題は、患者さんが自分の症状が掌蹠膿疱症だと認識せずに放置している場合です。

 最初は手のひらや足の裏が赤くなる程度ですが、悪化すると、前述のように肋骨痛や関節痛が表れます。放置期間が長くなると、歩けないほどの疼痛に悩まされる方もいます。

 掌蹠膿疱症と骨の痛みに関連があることは患者さんも想像できず、主治医に申告していないこともあります。そのため原因が突き止められないまま、骨の痛みが悪化してしまうこともあるのです。

 今、複数の治験が進行しており、治療の選択肢が広がることが期待されます。手足に水膨れができているが、なかなか改善しないという方はぜひ、専門医を訪ねてみてください。

葉山惟大

葉山惟大

関連記事