独白 愉快な“病人”たち

「今なら助かりますよね?」と無意識に…桑野信義さん直腸がん手術を振り返る

桑野信義さん(C)日刊ゲンダイ

 ところが、1つだけ切れないものがありました。それが立派に育った直腸がんだったのです。直径にして3~4センチかな。肛門の道をふさぐほどの大きさで、がんの写真を見せられたとき焦りました。そして無意識に「今なら助かりますよね?」と先生に尋ねていました。

 一番気がかりだったのは、2021年4月から始まるシャネルズの「40周年ツアー」です。1年の延期を経てやっとできるので、「ここまでには間に合いたい」という願いとともに治療を始めました。

 がんは肛門近くにあり、さらに左脚付け根あたりのリンパ節にも転移がありました。つまり人工肛門になるリスクが高かった。そのリスクを低くするために、まずはがんを小さくするための「XELOX(ゼロックス)療法」という抗がん剤治療をしました。

 オキサリプラチンという抗がん剤を病院で投与した後、家で3週間ゼローダという薬を毎日服用。そして1週間空けて、またオキサリプラチンから……というサイクルを8回繰り返す治療でした。途中から、がんに栄養を供給する血管を攻撃するための抗がん剤も加わり、副作用にもなんとか耐えていました。

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