名医が答える病気と体の悩み

20代でも「五十肩」になることはあるのでしょうか?

写真はイメージ
写真はイメージ

 五十肩は、「肩関節周囲炎」と呼ばれる疾患で、中高年、とくに50歳代に多くみられ、ケガなどの要因がなく肩の痛みが発症します。40歳代、60歳代前半で発症する場合もあります。中にはケガをして肩関節の動きが悪くなり、2次的な症状として20歳代で発症するケースもあります。 

 五十肩の原因は、肩関節を作っている肩甲骨、骨や軟骨、靱帯や腱板などが衰えてくることで、肩関節の周囲の組織に炎症が起きるためと考えられています。全人口の5%程度が発症するとみられ、女性の割合が多い。若いころから運動不足で肩甲骨回りの肩が硬かったり、糖尿病、甲状腺疾患、代謝性疾患の罹患歴のある方が悩まされるケースも少なくありません。

「肩関節周囲炎」は発症後、1年から数年で自然に緩和されることがほとんどです。ただ、痛みが強くて我慢できない場合は、治療を選択します。発症から慢性の経過をたどる経緯に3つの期間があり、それぞれの病期に合わせて治療します。

 初期の「炎症期」には、夜中にズキズキ痛んで目が覚めてしまったり、運動時に限らず安静時も痛みを感じます。この時期は無理に動かさずに整形外科を受診し、状況に応じて炎症を抑える注射などで対処します。

 その後、「拘縮期」を迎え、安静時の痛みや夜間の痛みは軽減しますが、肩関節の拘縮が始まります。ここでリハビリをスタートさせます。

「回復期」になれば痛みは軽減しますが、拘縮が残らないようにストレッチやより積極的な運動をしていきます。

 また、「腕が上がらない」「肩が痛い」と受診される患者さんの一部で、「腱板断裂」を起こしているケースもあります。これは、肩のインナーマッスルである腱板筋が上腕骨の付着部分で切れてしまった状態です。腱板が切れている場合は外科手術が必要となることもあり、「五十肩」だと自己判断していると肩関節の変形につながるリスクもあるので早めの受診が必要です。

▽鈴木辰朗(すずき・たつろう) 2013年3月に福島県立医科大学医学部卒業後、藤沢湘南台病院整形外科に勤務。21年4月から医療法人社団淳英会「おゆみの中央病院」整形外科医員。日本整形外科学会、日本関節病学会に所属。

関連記事