ブレークスルー感染が世界で増加中 ワクチン接種は本当に必要なのか?

ワクチン接種は自己判断で
ワクチン接種は自己判断で(C)共同通信社

 新型コロナウイルス感染症に対する唯一の対抗手段として期待されてきたワクチンへの信頼が揺らいできた。

 イスラエルや英米仏といったワクチン先進国で感染者が再び拡大し、2度のワクチン接種で抗体が完成したはずの人もその防御が突破され感染する「ブレークスルー感染」が世界中で報告されているからだ。しかも、少なくないワクチンの副反応も報告されている。ワクチン接種は本当に必要なのか?

 ワクチンについて専門家が発言の軌道修正を始めている。

 米国の新型コロナ対策の責任者で米国立アレルギー感染症研究所・ファウチ所長は12日の会見で「免疫が低い人以外は追加接種の必要はない」というそれまでの発言を翻し、「2度では不十分でいずれ全員が3度目のワクチン接種が必要となる」との認識を示した。

 理由は感染力の強い変異ウイルス・デルタ株の存在だ。従来株よりもワクチン効果が低いことが明らかになったからだ。その結果、ワクチンを接種したにもかかわらず陽性反応が出る「ブレークスルー感染」が増加している。

 米国疾病対策センター(CDC)は5月以降、ワクチン接種を完了した人については入院または死亡した感染例に絞って調査しているが、7月26日までに6587件のブレークスルー感染を報告している。このうち入院した患者は6239人、死者は1263人だった。米国内では同日までに、1億6300万人がワクチン接種を済ませていた。

 ちなみにブレークスルー感染の約74%は65歳以上のグループで起きていたという。

 また、世界最速のワクチン接種により1日の新規感染者数が1桁までに減少したイスラエルではデルタ株の出現で8000人を超える新規感染者が出ている。そのため2回目接種から5カ月以上経過した人への3回目接種を始めている。

 日本でも、国立感染症研究所が6月末までの3カ月間に67人確認されたことを報告している。

 70%の人がワクチン接種をすれば残り30%の人がワクチン接種できなくても守られる、とする集団免疫について、政府のコロナ分科会の尾身茂会長は8月11日のNHKの番組で「希望者全員がワクチン接種を済ませても集団免疫を獲得するのは難しい」と発言している。

 政府のワクチン接種スケジュールによると、8月9日時点で65歳以上の高齢者の81.6%が2回目接種を終えており、12~64歳に対しても11月半ばまでには希望者全員が接種を終えることになっている。

 つまりは日本で集団免疫が完成するであろう時期になって「集団免疫は難しい」というのだ。これでは、ワクチンに不信感を持つ人が出てきても不思議はないのではないか。

■自分で考え、自分の責任で接種

 しかも、ワクチン接種後の死亡報告事例が1000件に迫りながら、因果関係が明らかになったのはゼロ。その他の副反応も多数報告されながらもハッキリした因果関係はわかっていない。弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長がいう。

「結論を言えば、ワクチンを打つメリットは依然としてあると考えています。そもそもワクチンの本来の目的は感染しても重症化しないですむことにあります。仮にデルタ株に対するワクチン効果が90%台から60%台に下がったとしても、効果を否定するものではありません。現時点ではワクチンには効果があり、新型コロナから身を守る有効な手段だと考えています」

 ワクチンの効果は東京都のワクチン接種者と新規感染者、入院者の年代別の割合を示した資料を見ると明らかだ。

 例えば、8月1日現在で65歳以上のワクチン接種者は84%(うち2回完了者は75%)。

 一方、新規感染者のうち65歳以上の割合はワクチンクーポンが高齢者に配られ始めた4月20~26日の11.4%を境に右肩下がりになり、7月27日~8月2日では2.7%に低下している。入院患者の中の60歳以上の割合は今年2月の70%が、7月28日に22%となっている。

「ただし、ワクチン接種は自分がうつらない・うつさないために行うものです。自身の判断・責任で接種を決めることが大切です。副反応については件数に関係なく現実に起きている以上、注意が必要です。どのような人に副反応が出やすいのか、接種後はどのように過ごすのか、どのくらいの期間安静にしておくべきか。十分に情報を集め、体調によっては接種を延期する慎重さが必要だと思います」(林院長)

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