がんと向き合い生きていく

がん医療は変わってしまった…夫を亡くした看護師からの手紙

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 某市にあるC病院での出来事です。入院中の夫がいるB子さんは、面接室で担当医から、こう告げられました。

「今のままでは、いつ亡くなってもおかしくない状態です」

 B子さんは「分かりました」と言って、夫のAさん(58歳・建設会社勤務)がいる病室へ戻りました。Aさんは進行した肺がんで、すでに抗がん剤はやり尽くし、今回は呼吸困難となって入院されました。

 Aさんは鼻から酸素吸入を受けながら、部屋に戻ったB子さんに向かって「大丈夫だよ」とほほ笑みました。コロナ禍で長く病室に滞在することはできません。B子さんは少しだけホッとして病院から離れました。

 B子さんが自宅に戻っておよそ30分後、携帯電話が鳴り、担当医から、すぐに病院へ戻るよう言われました。

 B子さんが病室に駆け付けると、担当医と看護師がベッドの脇に立っています。Aさんの呼吸は止まっていました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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