がんと向き合い生きていく

がん医療は変わってしまった…夫を亡くした看護師からの手紙

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 短い期間でしたが、夫の治療を、担当医は頑張ってくれたと思います。今はコロナ禍の時代で仕方がないのかもしれません。コロナは人と人を引き裂いています。テレワーク、人流を減らせ、病院では面会も自由になりません。入院させていただけただけでも良かったと思うようにしています。葬儀は簡単に済ませました。夫の会社の方が2人来てくださいました。

 今、私は病院を辞めて、それでも働いていたほうが精神的に楽かなと思って、あるクリニックに勤めています。近くの公的病院がコロナ患者を受け入れるようになり、患者の病院への紹介がうまくいかなくなって苦労しています。

 ◇  ◇  ◇

 私は慰めの言葉もありませんでした。

 毎日のコロナ感染者、重症者、死亡者数の発表を聞くと、人の命が軽くなっているように感じます。コロナが収まった後、引き裂かれた人と人の心は戻ることができるのでしょうか。

4 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事