「忙殺されてデスクのどこに資料を入れたのか思い出せない」「スケジュールが詰まりすぎていて、次に何をするのか分からなくなる」など、忙しさが立て込むとどうしても思考力は停滞気味になってしまうと思います。
そういうときは焦らずに、あえてスローに動いてみてください。「何を悠長な! こちらは焦っているんだ」なんて声も聞こえてきそうですが、タフツ大学のスレピアンとアンバディーの研究(2012年)によると、「なめらかな手指の運動をすればスムーズな思考が導かれ創造的になる」。焦っているときこそ、なめらかな動きをした方がいいというわけです。
実験では、2つのチームにそれぞれ曲線的な線画と、直線的な線画を描いてもらいました。そして、線画を描き終えた後に感想を求めたところ、どちらのチームとも、曲線的な線画を描いた後の感想の方が、よりディテールが細かい創造的なコメントを残したといいます。研究では、考えが煮詰まったときなどは、なめらかな手足の動きをするようなアクションによって、スムーズな思考が導かれやすく効果的とうたっています。
また、面白いところでは、「動物園でゾウを見ると血圧が下がる」なんてことも言われています。
確かに、猿のように俊敏な動物は見ている分には楽しいですが、動きがスピーディーで疲れそうですし、ライオンのようなカッコいい動物は気おされそうですよね。
一方、ゾウのようにゆったりとした動物は、見ていると次第に癒やされる気持ちになると思います。
ゆったりと動くものというのは心を落ち着かせる――。だからこそ、世界各国にはさまざまなスローな運動や文化が存在するわけで、ゆったりとしたものを自分に取り入れると有効的という事実は、はるか昔からわれわれ人類が経験則として学んでいたことなのかもしれません。太極拳やヨガなどが、多くの人に親しまれているのも納得なのです。
現代人は、時間や情報に追われせわしなくなりがちですから、“スローな動き”をスローガンにしてみると◎。実際に、深呼吸を一度するだけで落ち着くことが証明されていますから、スローな所作は脱ストレスを考える上でもとても大切です。
ちなみに、深呼吸をする際は、4秒かけて鼻から息を吸って、7秒間呼吸を止め、8秒かけて口から息を吐くと、気分を落ち着かせる副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなるといわれているので、ぜひ試してみてください。
先述したように、なめらかな手指の運動を日常的に取り入れるのであれば、スキンケアの時間や入浴時に応用できると思います。仕事で集中力を欠いているなと思ったら、お風呂で湯船につかりながらゆっくりと、なめらかな動きを行ってみる。あるいは、空中にゆっくりとなめらかに8の字を繰り返し描いてみるのもいいかもしれません。
せわしなく動いているときこそ、ゆったり&ゆっくりするアクションを取り入れる。おのずと、頭もクリアになり、落ち着いて物事を考えられるようになるはずですよ。
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