医者も知らない医学の新常識

甲状腺ホルモンが低下すると腎臓が悪くなる?789人の解析結果

写真はイメージ

 腎臓は体でいらなくなった物質を尿から排泄する働きを持つとともに、体の水や塩分の調整など、生命に直結した重要な働きを持っている臓器です。その働きが持続的に低下した状態を「慢性腎臓病」と呼んでいます。慢性腎臓病が進行すると、腎臓の働きが高度に低下した腎不全という状態になり、人工透析といって血液を取り出して濾過する治療が必要になることもあります。

 腎臓病の原因は高血圧や糖尿病などの血管の病気であることが多く、血圧や血糖を正常に保つことが腎臓病の予防のためには何より重要です。最近、ある血液のホルモンの値と慢性腎臓病との間に、強い関連があることが注目されています。そのホルモンとは、甲状腺ホルモンです。

 甲状腺は首のところにあるチョウの羽の形をした組織で、そこから体の代謝を良くしたり、心臓を刺激したりする甲状腺ホルモンが分泌されるのです。今年の内分泌学の専門誌に発表された論文によると、甲状腺機能が正常の789人を解析したところ、甲状腺機能低下症の指標である、血液中のTSHという値が高いほど、腎機能の指標である腎臓の血流量が低い、という結果が得られたのです。

 その原因についてはまだ不明の点が多いのですが、甲状腺のホルモン機能の低下は、腎臓の働きと深い関係があるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事