そして迎えた1998年、止めた車から降りて歩き出すと、急に左半身が軽くなったのです。それまでのこわばりや肩こりも感じなくなって、まるで体の左側だけが初期化されたような感じがしました。「これはついに来たか?」と思ったと同時に、「とにかくすぐ来なさい」という医師の言葉が頭に浮かび、あれこれ考える間もなく自分で車を運転して一目散に病院まで行きました。
結果的には、この判断が良かったのだと思います。安全運転で病院まで30分ぐらいかかったでしょうか。着くとそのまま救急処置室に入って「脳梗塞」と診断され、すぐに治療を受けました。ステロイドの点滴です。
病院に着いた頃には、だいぶ左半身が動かない状態で、唇も半分下がっている感じでろれつも回らなくなっていました。それでも自分の場合は、処置までが早かったので、後遺症は少なくて済み、こうして今も両手で演奏できていることを幸せに思っています。
独白 愉快な“病人”たち