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腸<上>ガス排出を促す腸ストレッチ4つの基本型 専門医が考案

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 腸の不調といっても、さまざまな症状がある。中でも多いのは「お腹の張り(腹部膨満感)」だ。便秘の人は硬い便が多量に貯留し、腸管内をふさいでしまうので腹部膨満感の症状が強くなる。しかし、便秘でない人でも便秘の人とほぼ同率程度で、腸にガスがたまっていてお腹の張りが気になる人がいることが分かっている。

 お腹にガスがたまりやすくなる要因のひとつに、緊張やストレスによって多量の空気を無意識にのみ込みやすくなる「空気嚥下症」がある。のみ込んだ空気をゲップとして口から外に出さないと、腸の方に下がってガスになるのだ。それに緊張が高まると、交感神経が刺激されて胃腸の動きが低下し、ガスがたまりやすくなる。

 また、炭酸飲料を飲む、ガムを噛む、早食いをするなどの「飲食」という行為によってもガスが腸の方に送られる。食品によっては腸内で発酵して多量のガスを発生するものもある。

 腸のガスは、成人では誰もが1日に0.5~2リットル発生し、排便時に便と一緒に排出したり、オナラとして外に出している。

 消化器内科専門医で、「腸ストレッチでお腹スッキリ!」(マイナビ)の著者でもある「松生クリニック」(東京都立川市)の松生恒夫院長が次のように言う。

「ガスが発生することは悪いことではありません。あくまでガスが排出しにくい状況をつくってしまうことが問題なのです。横行結腸にガスが多くたまると胃を圧迫して、胃の内容物の流出を滞らせるためか、逆流性食道炎の症状と同様の悪心や食欲不振、胸焼けなどの症状を起こします。また、2010年のJ.Y.チャンらによる報告では、慢性的な便秘がある人よりも、ない人の方がさまざまな病気にかかりにくく、あきらかに生存率が高かったとしています。ですから、少しでもお腹がスッキリした状態にしておくことが、健康のために大切なのです」

 では、腸内にたまったガスの排出を促すいい方法はないのか。そこでおすすめするのが、松生院長が5万件を超える大腸内視鏡検査の施術を通して編み出した「腸ストレッチ」だ。

 大腸内視鏡検査は、どこの施設でも多かれ少なかれ大腸内に空気(または二酸化炭素)を注入して、腸管を拡張しポリープやがん、炎症の有無などをくまなく観察する。そして大腸内視鏡の先端は、空気や水を注入したり吸引する装置が付いているが、どうしても空気が完全に吸引されず、大腸内に残ることがある。すると大腸内視鏡検査終了後に、腹部膨満感を訴える人がいるのだ。

 そこで松生院長は15年前から大腸内視鏡検査終了後に「ネラトン」というゴムのチューブを肛門から少し挿入し、お腹を軽く圧迫してたまっていた空気をほぼ完全に抜くようにしている。そうすると検査終了後に腹部膨満感を覚えることなく、楽になって帰宅することができるという。この大腸内視鏡検査終了後のお腹のガスを抜く方法を応用したのが「腸ストレッチ」というわけだ。

「よく内科医が慢性便秘症の患者さんで腹部膨満感があるときに投与する『ガスコン』という薬がありますが、投与してもあまり効果がありません。それよりお腹が張ったときに、お腹の右側から左側へ手のひらでお腹をプッシュした方が、お腹の中のガスが抜けやすいのです。腸ストレッチは腸にたまったガスを、外部からの刺激で排出することなのです」

「腸ストレッチ」の基本となるのは、次の4パターンだ。

①【左向きに寝そべり、右わき腹を右手のひらで下側へプッシュする】

 体の左側を下にして横になる。左肘をついて左手で頭を支えながら、左わき腹に枕などを入れる。右手のひらで、右わき腹から下部(左側)へ2~3分間プッシュする。

②【あおむけになり、右手を右側腹部から左側腹部へプッシュしながら移行する】

 あおむけになる。右手のひらで、右側腹部から左側腹部へプッシュしながら2~3分間マッサージする。

③【右向きに寝そべり、左わき腹を左手のひらで斜め下にプッシュする】

 体の右側を下にして横になる。右肘をついて右手で頭を支えながら、右わき腹に枕などを入れる。左手のひらで、左わき腹の上部から斜め下へ2~3分間プッシュする。

④【うつぶせになり深呼吸する】

 腹部の下に枕などを入れ、うつぶせになる。腸に刺激を届けるつもりで、お腹を膨らませて深呼吸(腹式呼吸)を2~3分間繰り返す。

 次回は、座位や立位で行う「腸ストレッチ」を紹介する。

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