科学が証明!ストレス解消法

温かい飲み物を持つと脳の前頭前野が活性化しポジティブに

写真はイメージ
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 人間関係は想像している以上に複雑です。「この人、苦手だな」と感じてしまえば、その瞬間から苦手意識が芽生え、その人との関係性は向上しづらくなってしまいます。一方、自分と気が合う人とだけで人間関係や仕事を続けていると、居心地の良さこそあるかもしれませんが、刺激が足りずに井の中の蛙(かわず)になってしまう可能性も否めません。

 どうしても苦手な人とは付き合う必要はありません。しかし、好きか嫌いか判別できない段階においては、なるべくフラットな目線を持って他者と接した方が、視野も可能性も広がるはずです。

 誰かと話し合いをしたり、打ち合わせをしたりする――。その際に覚えておきたいのが、「温かいものに触れる」。

 ささいなテクニックかもしれませんが、「冷たい飲み物が入ったカップを持つときと比べて、温かい飲み物が入ったカップを持って接したときの方が他者をより温かい人物であると評価する」とは、米国のコロラド大学のウィリアムズとエール大学のバーグの研究(2008年)です。

 この研究は、世界的に権威を持つ学術雑誌のひとつ「サイエンス」で発表されたもの。実験では、41人の被験者に温かいコーヒー、あるいは冷たいコーヒーを持たせた後、質問用紙に書かれた人物についての評価を行ってもらいました。

 その結果、温かいコーヒーを持っていた人の方が、その人物に対して好意的な印象を述べ、「優しい」「配慮がある」といった、文字通り“温かい”評価をする傾向にあったのです。この実験は、コーヒーを飲むとカフェインの摂取など個体差が出てしまうため、あくまで触っているだけという条件下で行われました。つまり、雑談やミーティングのときに温かい飲み物を手にしているだけで嫌な気分が減少し、ポジティブな態度を取る傾向が強くなる……、すなわち他者と対峙する際に、心に余裕を持ちやすくなるわけです。

 また、53人の被験者に「新製品の評価」と称して、温かいパッドあるいは冷たいパッドを手渡して評価してもらい、ギフトを選んでもらうという実験も行いました。

 すると、温かいパッドを持った人の54%が家族や友人へのギフトを選んだといいます。一方、冷たいパッドを持った人の75%は自分用のプレゼントを選んだそうです。実際、温かいものに触れているときは、コミュニケーション力や考える力などを向上させる前頭前野が活性化していることも研究で明らかになっています。

 温かいものを持っているだけで、他人を温かく受け止め、配慮や気遣いの精神が生まれやすくなる。つまり、優しい気持ちになれるわけですから、人間関係を構築していく際は温かいものに触れながらコミュニケーションを取るべきです。温かい気持ちを持てば、その分、豊かな人間関係を育みやすくなり、一時の感情で関係性を台無しにしてしまうなんてことも減るはず。体も温まり、他者との関係性もホッとできるものになるでしょう。

「お飲み物は?」と聞かれたら、温かい飲み物をオーダーするといいですよ。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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