受験生とその家族が知っておきたいコロナワクチンの基礎知識 接種のタイミングは?

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 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、子供の感染対策に頭を悩ませている人も多いはずだ。深刻なのは受験生の親だろう。わが子の人生を懸けた努力を感染で台無しにされてはたまらない。そのためワクチン接種も検討課題となる。

 ワクチン接種の対象は接種の日に満12歳以上の人となっている。現在、アストラゼネカ社製は原則として40歳以上が接種対象なのに対して、ファイザー社製とモデルナ社製はともに12歳以上。このため、試験日までに12歳に達していない一部の中学受験生を除き、受験生はファイザー社製かモデルナ社製を打つことは可能だ。

■効果と副反応

 弘邦医院の林雅之院長が言う。

「ファイザー社製については12~15歳のワクチンの有効性と安全性を調べた論文が欧米の一流医学雑誌に掲載されています。12~15歳の2260人と、それと比較するために16~25歳の869人を対象にしたものです。それぞれ二分し、半分はファイザー社製ワクチンを2回打ち、残りの半分は偽薬を投与しました。結果、ワクチンの有効率は100%。偽薬群では16人が新型コロナに感染し発症しましたが、接種群では発症者はゼロ。副反応は16~25歳と同じく、局所の疼痛、倦怠感、頭痛などが見られたものの、数日で軽快。2回接種で獲得される中和抗体量は、16~25歳に比べて1.76倍高いと報告されています」

 16歳以上を対象とした海外6カ国の臨床試験の内容も公開されている。2回接種後7日目での有効率は、新型コロナの感染歴がない場合で95%、感染歴を問わない場合で94.6%だった。

 モデルナ社製は12~17歳の健康な人を対象にした海外データが公開されている。2139人のワクチン接種群と、1042人の偽薬接種群とで発症がどの程度抑制できるかを2回目接種後14日目で比較したところ、新型コロナ感染歴のない人は100%の有効率が確認された。このとき偽薬接種群からは4人の感染者が出たという。また、2回目接種から28日目の血清中の中和抗体量の増加が確認され、18~25歳のそれと比較しても劣っていなかった。

 福島県相馬市では12歳以上の中高生約3万人の86%が2回接種を完了している。高校生(15~18歳)への調査では、接種後に、発熱、頭痛、倦怠感などの副反応はあったものの重症化したものはなく、2~3日で回復したという。ただし、2回目接種後に37.5度以上の発熱があったとの回答が全体の56%で、頭痛とともに市職員(20~60代)の場合の回答よりも多かった。

 模試や授業に及ぼす影響を考えて接種日を決める必要がありそうだ。

■接種のタイミング

 ファイザー社製は1回目接種から3週間後に2回目を接種。最も高い効果が得られるのは、その7日後以降だ。つまり最初の接種から4週目ということになる。

 モデルナ社製は1回目接種から4週後に2回目を接種する。十分な免疫が確認されるのは、2回目の接種を受けてから14日以降。つまり6週目だ。

 一般選抜試験を希望する国公立大学受験生にとって、最大の関門となる「共通テスト」の受験日は来年1月15、16日の予定。私立大学の個別試験の試験日は1月下旬から2月中旬に集中する。

 私立高校の試験日は首都圏、関西圏ともに2月中旬が中心。公立高校は東京都の場合は、学力による第1次募集などが2月21日。大阪は実技を伴う特別入試が2月17、18日で、一般入学者選抜は3月9日。中学はおおむね1月から始まる。

「ワクチンは打てるときに打つ方がいい。ただ、予約が取れない場合は焦らず、受験日にワクチン効果が最大となるよう接種日を調整するといいかもしれません」(林院長)

 生まれ月の関係でワクチン接種ができず、そのことを気に病む中学受験生に対しては、親が「周りがワクチンを打ってくれれば自分の感染確率も下がる」と話すのもいい。16歳未満のワクチン接種を敬遠する医師もいるため、中学受験の接種希望者は小児科医に早めの相談をおすすめしたい。

■家族は3回目の検討も

 国内外で2回目接種後に感染する人が相次いでいる。ワクチン先進国のイスラエルでは、政府が50歳以上に対し2回目接種から5カ月後に3度目を受けるよう奨励している。

 受験生と同居し、8月までに2回接種を完了した50代以上は、3度目接種を覚悟して政府の動向を見守ることだ。

 なお、ワクチン接種は重症化を防ぐためのものであり、接種しても感染することはある。大切なのはマスク着用、3密回避といった日々の感染対策であることをお忘れなく。

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