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ワクチン接種と大動脈解離は本当に無関係か?接種後死亡1093事例中32例

接種後の血圧にも注意したい
接種後の血圧にも注意したい(C)日刊ゲンダイ

 大動脈解離は突然死に直結する恐ろしい病気だ。心臓から全身に血液を送る最も太い動脈である大動脈の血管壁に血液が流れ込み、外膜・中膜・内膜の3層になっている大動脈壁の内膜に亀裂が入って中膜が急激に裂けていく。

 病気がゆっくり進行していく慢性のものもあるが、急性大動脈解離は急速に進行する。大動脈からは脳や心臓、そして全身の臓器へ向かう動脈が分岐しているため、血管壁が解離して血流が途絶えると、脳梗塞や心筋梗塞などを起こし、突然死につながることがある。

 なかには解離して薄くなった血管壁から血液が染み出すように出血して心臓を覆っている心嚢と呼ばれる袋にたまることがある。

 心嚢には心嚢液があって、心臓の拡張や収縮のための潤滑油になったり、外部からの衝撃を和らげるクッションのような役割を担っている。そこに血液が流れ込み心嚢液が大量に貯蓄すると、心臓の動きが悪くなり、心臓から出ていく血液が減ってショック状態になる「心タンポナーデ」という状態になる。

 実は、新型コロナワクチン接種後の死亡事例報告1093例(8月25日時点)のうち大動脈解離は32事例報告されており、うち18例は接種後3日以内に亡くなっている。

 厚労省は「新型コロナワクチンQ&A」で「現時点において、ワクチンを接種した人の方が、接種していない人よりも、くも膜下出血や急性大動脈解離が起こりやすいという知見はありません。くも膜下出血や急性大動脈解離は、偶発的に起こりうることから、ワクチン接種後に起きた場合でも、それだけで、ワクチンが原因で起きたというわけではありません」としているが、本当か? 

■接種後に血圧が上がるケースが報告されている

 大動脈解離に関する全国統計はいまだなく正確な発症率は不明だが、東京都急性大動脈スーパーネットワークのデータによると人口10万人あたり10人。1億2500万人に換算すると年間1万2500人、一日あたり34人が発症していることになる。

 これだけみるとたまたまのようにも見えるが、ワクチン接種後死亡事例のなかには46歳男性や55歳男性のように持病もないのに1回目接種後の翌日に急性大動脈解離と心タンポナーデで亡くなった例も含まれている。

 そもそも本当に無関係ならなぜ「γ(情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの)」なのか。

 大動脈解離は、血管内膜に亀裂が入りやすい状態であることが原因。血管の内側を構成する血管内皮にかかるストレスが関わっており、高血圧、喫煙、ストレスなどが発症リスクといわれている。弘邦医院の林雅之院長が言う。

「一般的にワクチン接種時は恐怖や緊張感から血圧が下がることが知られていますが、スイスの報告では新型コロナワクチン接種後に倦怠感、息切れ、頭痛などの症状を訴える患者を調べたところ、9例でⅢ度高血圧(収縮期血圧が180㎜Hg以上、拡張期血圧が110㎜Hg以上)となっていたことが報告されています。9人の年齢の中央値は73歳、男性2人、女性7人で8人に高血圧の持病があり、多くが降圧治療を受けていましたが、高血圧でない人もいました。なぜこうした現象が起きたのか、理由はわかっていません。ただワクチン接種後の死亡報告事例のなかに大動脈解離を含めて高血圧が発症リスクとなる病気が数多く見られること、これからの季節は血圧が高くなりがちなことから、中高年はワクチン接種前の血圧管理と接種後のモニタリングが必要なのではないでしょうか」

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