9.11同時多発テロから20年を前に、スパイク・リー監督の「NYC Epicenters(ニューヨークシティ・エピセンターズ)9/11―20212分の1」が話題になっています。9.11とパンデミックをつなげるという野心的な4回シリーズで、9.11まで毎週ケーブルチャンネルHBOで放映されています。
リー監督といえば、80年代の「ドゥ・ザ・ライト・シング」から90年代の「マルコムX」、昨年の「ザ・ファイブ・ブラッズ」まで、黒人を取り巻く社会問題や歴史を鋭くえぐりながらも、地元ニューヨークへの温かいまなざしとユーモアを交えた独特の作風で世界的に愛され、高い評価を受けています。
「エピセンター」は英語で「震源地」のこと。9.11、そして、昨年パンデミック初期に世界最悪の感染都市となったニューヨークはコロナでもエピセンターであるということで、このタイトルが付けられました。リー監督が200人以上に直接インタビューし、逆境に立ち向かう強さや助け合う姿を生き生きと描くと同時に、その影にある不正や欺瞞を告発しています。
例えば9.11直後、当時の環境保護庁長官がグラウンドゼロの大気は安全とする発言をしたために、救助復旧に当たった多くの人が呼吸器疾患やがんになるという悲劇があったこと。トランプ前大統領とクオモ前NY州知事のエゴのためにコロナに関する重要な情報が伝達されず、多くの人が無駄に命を落としたこと。こうした政治家の堕落した態度によって政府への信頼が失われ、その結果、9.11やコロナワクチンなどに関するさまざまな陰謀論が蔓延する結果になったことも浮き彫りにされていきます。
ところでその9.11の陰謀論に関しては、リー監督が世論の圧力によりその部分を削除せざるを得なかったという報道もされ、論争になっています。日本での公開は未定のようですが、ぜひお勧めしたい作品です。
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