病気を近づけない体のメンテナンス

腸<下>お風呂で行うワンランク上の「腸ストレッチ」消化器内科の名医が教える

便秘がない人の方が長寿(写真はイメージ)
便秘がない人の方が長寿(写真はイメージ)

 腸の不調の中でも、誰もが経験することが多い「お腹の張り(腹部膨満感)」。特に便秘気味の人には強く出やすい症状だが、便秘でない人でも「炭酸飲料を飲む」「ガムを噛む」「早食いをする」などの「飲食」という行為も腹部膨満感(腸にガスがたまる)の原因になる。

 米国のJ.Y.チャンらが2010年に報告した調査(20歳以上の3933例)によると、慢性的な便秘がある人よりも、ない人の方がさまざまな病気にかかりにくく、あきらかに生存率が高かったという結果が出されている。

 つまり、便秘がない人の方が長寿につながる。そして、腹部膨満感が強ければ強いほど便秘の程度が重い傾向があるので、できるだけ腹部膨満感は減らした方がいいわけだ。

 消化器内科専門医で「腸ストレッチでお腹スッキリ!」(マイナビ出版)の著者でもある、「松生クリニック」(東京都立川市)の松生恒夫院長が言う。

「実は、脳は腸が進化してできた臓器で、人の腸は脳と約200本の神経でつながっているといわれています。その関係で腸の運動が悪化して腹部膨満感や排便障害などが出現すると、脳へも不快感が伝達されるのです。このような関係を『脳腸相関』といいます。ですから、腸が正常に動いていれば、脳への不快感もなく、また寿命も長くなって体も元気なのです」

 腹部膨満感を解消(排ガスを促す)する効果的な方法には、松生院長が考案し、患者にも指導している「腸ストレッチ」という方法がある。基本的なストレッチは次の4パターンだ。

①左向きに寝そべり、右脇腹を右手のひらで下側へプッシュする。

②あおむけになり、右手を右側腹部から左側腹部へプッシュしながら移行する。

③右向きに寝そべり、左脇腹を左手のひらで斜め下にプッシュする。

④うつぶせになり深呼吸(腹式呼吸)する。

 これは大腸にたまったガスを、上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸の順で移行させて抜くことで、腹部膨満感を取り去るストレッチになる。この4パターンを2~3分ずつ、1日1~2回行うことで、お腹の張りや腸内環境が改善されるという。

「仕事中にお腹が張ってきたという場合でも、腸ストレッチを行うことができます。基本のストレッチの②と③を、デスクワークなら座ったまま、立ち仕事なら立ったまま行えばいい。腹部の右側から左側へ手のひらで2~3分間プッシュしてガスを左側へ移行します。そして、左脇腹を左手のひらで斜め下にプッシュすることで、ガスをS状結腸へ移行させるのです」

 もっと簡単な腸ストレッチは腰から腹部をひねるツイストを1~2分程度行うやり方だ。右側にたまったガスが左側(肛門に近い方)に移動しやすくなる。そして、時間的に余裕ができたときに、トイレに行ってガスを排出する。もしガスが抜けにくいようなら、シャワートイレで少しだけ肛門を刺激するとガスが抜けやすくなるという。

 最もガスが抜けやすいのは入浴時。ぬるめのお湯(38~41度ぐらい)にゆっくり漬かると、腸をつかさどる副交感神経の働きが活発になり、腸がリラックスするからだ。このときも腹部を右手のひらで右側から左側へプッシュする。ある程度お腹の左側へガスがたまったら、左上腹部から左下腹部へプッシュする。

「入浴時に腸ストレッチと併用するとさらに効果が高まるのが、エッセンシャルオイル(精油)を使うアロマバスです。ぬるめの湯に漬かるだけでも副交感神経の働きが促進されますが、そこにハーブの芳香成分が凝縮されたアロマで心地良い香りをたてると、アロマセラピー効果でさらに副交感神経の働きが高まり、腸がリラックスします」

■仕上げは「お尻歩き」

 アロマバスで使うエッセンシャルオイルとしては、「ラベンダー」「カモミール」「ネロリ」「ミント」などがおすすめ。エッセンシャルオイルを湯船に入れるときは、キャリアオイル(希釈用のオイル)に溶かしてから使う。キャリアオイルには、「オリーブオイル」「ホホバオイル」「アーモンドオイル」などがある。

 基本の腸ストレッチ(4パターン)の後に行うと、さらに排ガスにつながるのが「お尻歩き」だ。足を伸ばして床に座り、腹式呼吸をしながら、腰をひねり、お尻を左右に動かしながら前進する。スペースがない場合は、ある程度進んだら、後ろに進む。腹圧が上がり、大腸を動かす刺激になり、より排ガスが促進されるという。

関連記事