名医が答える病気と体の悩み

仕事が忙しくて睡眠不足…休日に寝だめはできますか?

精神神経科心療内科の澤田法英氏
精神神経科心療内科の澤田法英氏(提供写真)

 平日の睡眠不足を補うために、休日にまとめて睡眠をとる「寝だめ」。結論からいうと、寝だめはできません。

 脳は使い続けると疲労が蓄積します。睡眠をとるのは脳を休ませるためで、睡眠不足とは脳と体の疲労が取り切れない状態をいいます。睡眠不足の状態が続くと「睡眠負債」を抱えます。それにより倦怠感や頭痛、抑うつ、不安障害、認知症のリスクを高め、糖尿病と心臓病の悪化にもつながると報告されています。

 睡眠負債をなくすために休日にまとめて寝ても、一時的にスッキリしますが、慢性的な疲労状態は十分改善されません。たとえば、寝だめした翌日に徹夜に耐えられるかといえばそうでもない。眠気にもおそわれます。その人にとっての必要な睡眠時間を毎日確保することが大事。逆に、毎日の睡眠時間が足りている人が、睡眠を多くとると質が落ち、眠りが浅くなります。

 むしろ休日の寝だめによって、体内時計のリズムに変調をきたし平日に普段通り起きられなくなるケースがあります。クリニックにも、「月曜の朝起きられずに欠勤してしまった」と、抑うつ状態になった患者さんが時々いらっしゃいます。リズムを崩さないため、休日に寝だめするなら「平日の睡眠時間のプラス2時間まで」とアドバイスしています。起きた後、すぐにベランダや窓際に立って日光を浴びると体内時計がリセットされてリズムが整うので、試してみましょう。

▼澤田法英(さわだ・のりふさ) 2002年、慶応義塾大学医学部卒業後、同大医学部精神神経科学教室研修医課程および専修医課程へ。06年東京都済生会中央病院心療科(精神科)、11年医療法人財団厚生協会大泉病院精神科などを経て、19年に「こころと眠りのクリニック成増」を開設。また、06年から現在まで、複数の企業で産業医・精神科嘱託医として勤務。

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