腰痛治療の新たな選択肢になるか?「遠絡療法」とは何か

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本整形外科学会の調査によれば、腰痛を抱える人は3000万人。75%以上が丁寧な診察によって原因が分かるというが、薬、理学療法、リハビリ、神経ブロック注射や局所ステロイド注射を受けても腰痛がなかなか改善せず、日常生活に支障を来している人もいる。その場合、治療の選択肢のひとつとして、台湾出身の麻酔科医、柯尚志医師が約20年前に体系化した「遠絡療法」を試してみる手もある。

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「遠絡療法は、痛みなど症状がある場所には触れずに、遠く離れた部位を専門のソフトレーザーや指圧棒などで刺激して症状を取る治療法です」

 こう言うのは、埼玉県・小泉医院遠絡医療の小泉正弘院長(日本遠絡統合医学会診断指導医)。

 漢方医学用語で「経絡」という言葉があり、これは気・血・水というエネルギーの流れのことだが、「遠絡」は「遠く離れた経絡(要穴)から治療する」というところからきている。

「血液やリンパ液、ホルモン、神経伝達などの“生体の流れ”が滞ったり詰まったりすると、痛みやしびれといった症状が出てきます。これらに影響を与えるのが『経絡』で、遠絡療法では『ライン』と呼んでいます。ラインに刺激を与えることで、滞りや詰まりを取り除いていくのです」(小泉院長=以下同)

■レントゲンやMRIで変形が認められない場合に有効

 腰痛といっても、椎間板ヘルニアや変形性腰椎症、腰椎すべり症、脊柱管狭窄症などがあり、画像診断の結果や症状の出方はさまざまだ。また、ぎっくり腰のように画像上は問題が見られない場合も多い。

「レントゲンやMRIの画像で重度の変形が確認され、明らかに腰痛の原因となっている場合は、遠絡療法は向いておらず、手術をお勧めします。一方、画像検査上はそう問題はないのに、痛みやしびれがある場合、脊髄や脊髄神経の微細な炎症で生体の流れが滞っていると考えられます。脊椎のレベルや症状の範囲に応じて、遠絡療法の理論に基づいて刺激を加えながら、生体の流れの調整を行います」

 どこに刺激を加えるかは、柯尚志医師が構築した1万例以上の臨床経験データから決まっている。

 たとえば脊柱管狭窄症は、整形外科領域の診断では腰椎の4番と5番が狭窄し血流が悪くなっていることが多い。

 遠絡療法では、前出の通り1万例以上の臨床経験データから腕に刺激を加え、生体の流れを良くし、結果的に腰椎の4番、5番の血流を良くする。

「一般的な腰痛であれば、1回約30分の施術で70~80%ほどの痛みが消失します。再び痛みが出てくるケースでも、遠絡療法を繰り返し受けているうちに痛みがない期間が長くなり、最終的に痛みの消失が期待できます」

 慢性的な腰痛があると、痛みのために体を動かさないなどの精神的ストレスが続き、痛みを抑制する脳のシステムが過敏になって、さらに腰痛を強く感じるケースがある。遠絡療法は、この改善にも役立つという。

 脊柱管狭窄症の50代男性は、腰を反らしたり回したりすると、右の腰からお尻にかけて激しい痛みがあった。

 サポーターを付けても好きなゴルフができづらくなり、小泉院長の元を訪れた。

 1回目の治療では、すぐ腰を回した時の痛みが消えた。2回目の治療後は、ゴルフ中も痛みが出なくなった。

 MRIの結果では脊柱管は狭いままだが、腰痛を感じることはなくなり、東京マラソンにも参加できた。

 保険適用外なので、金額はかかる。しかし、試してみる価値はある。

 ただし、腰痛はがんなど腰以外の病気で生じているものもあるので、まずは腰痛の原因をしっかり調べることが大前提だ。

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