新型コロナウイルスワクチンは妊娠中においても安全に接種できると考えられており、厚生労働省は、時期を問わず妊娠中のワクチン接種を推奨しています。一方で、インターネット上では妊娠中に新型コロナウイルスワクチンを接種すると流産の危険性が高まるといった情報も見受けられます。このような情報に不安を覚え、ワクチン接種をためらってしまう妊婦さんもおられるかもしれません。
そんな中、新型コロナウイルスワクチンと流産の関連性を検討した研究論文が、米国医師会誌の電子版に2021年9月8日付で掲載されました。
この研究では、米国のワクチン安全データリンクと呼ばれるデータベースに登録された10万5446件の妊娠事例が解析対象となっています。対象事例のうち、流産に至ってしまった1万3160件と、妊娠が継続された9万2286件について、新型コロナウイルスワクチンの接種状況を調査し、妊娠中のワクチン接種と流産の関連性が検討されました。
その結果、新型コロナウイルスワクチンの接種歴は、流産に至ってしまった事例で8.6%、妊娠が継続された事例で8.0%と、統計学的にはほぼ同等であり、ワクチン接種による流産リスクの上昇は認められませんでした。この結果はモデルナ社製ワクチンやファイザー/ビオンテック社製ワクチン、それぞれについて解析しても同様でした。
この研究では、妊娠中の新型コロナウイルスワクチン接種と流産リスクに関連性を認めておらず、これまでの見解を支持する結果となっています。妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすく、また早産のリスクが高まることも知られています。家庭内感染が増え続ける中で、妊娠中の女性は積極的なワクチン接種が望まれます。