上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

がんではなく心血管疾患が原因で亡くなるがん患者が増えている

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 また、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、悪性リンパ腫など、使用頻度が高いアントラサイクリン系の抗がん剤は、不整脈、心筋症、心筋炎、心外膜炎といった心臓疾患が表れる場合があります。心筋に対する毒性があり、蓄積投与量が増えるにつれて心不全のリスクが高くなり、患者さんによっては遅発性の副作用が起こり、在宅中に急変をきたすケースがあることもわかってきました。

 近年になって登場した分子標的薬の多くも、高血圧、心筋障害、冠動脈疾患、心不全の副作用が報告されていますし、オプジーボ(一般名:ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害薬も、心筋炎、心房細動、心室性期外収縮などの心臓障害を起こすリスクが指摘されています。

 抗がん剤ではありませんが、前立腺がんの治療などで使われるホルモン剤も、患者さんによっては一気にコレステロール値が上昇して動脈硬化の促進に傾くため、心血管疾患につながりやすくなるといわれています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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