■放射線治療が影響するケースも
心臓に負担をかけるがん治療は抗がん剤だけではありません。放射線治療でも、心臓に悪影響を与えるケースがあります。近年の放射線治療は患部に対してピンポイントに照射できるようになってきましたが、それまでは広範囲に強く放射線を当てていました。そのため、たとえば乳がんで放射線治療を受けたことがある患者さんの中には、心臓付近の血管の石灰化が進んでいたり、弁にも影響が出て不整脈や心臓弁膜症を起こす人もいます。
以前、30代で乳がんの手術と放射線治療を受けたことがある70代後半の患者さんの心臓手術を行ったことがあります。その患者さんは、かつての放射線治療の“後遺症”によって、冠動脈狭窄、心臓弁膜症、不整脈を起こしていたため、10時間以上かけて冠動脈バイパス手術、弁形成術と弁置換術、メイズ手術を実施しました。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」